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幻の炭鉱料理“馬の腸”を煮込んだ『なんこ』地元で引き継がれる味に札幌出身の堀内美里アナ「こんなにおいしい料理、もっと広まって」北海道歌志内市

2024年08月19日(月) 19時56分 更新

 北海道の食を深堀りして、その価値を考えるシリーズ「食の未来を考える」です。今回、紹介するのは、堀内美里アナウンサーが大学時代から愛してやまない、ちょっとクセの強い郷土料理です。

堀内美里アナウンサー
「私の思い出の味、それは『なんこ』です」



北海道歌志内市の郷土料理「なんこ」、「馬の腸」を味噌味で煮込んだ料理なんです。

そんな「なんこ」は、まちの歴史と深く結びついていているということで、歌志内郷土館の佐久間さんが案内してくれました。

1948年のピーク時には、約5万人が住んでいた歌志内市。

当時、日本のエネルギーを支えていた石炭で栄えていました。



歌志内市の炭鉱を担ったのは、石炭採掘技術と共に秋田からやってきた炭鉱マンでした。



さらに一緒にやってきたのが、秋田の郷土料理「なんこ」だったんです。

炭鉱で、荷物の運搬に使われていた馬。

作業中に命を落とすことも多く、弔いの意味も込めて、馬の肉が食べられていたそうです。



郷土料理ゆめつむぎ 佐久間淳史さん
「馬肉はスタミナがつく料理だと言われていた。午の刻はちょうどお昼に当たる。その時に太陽が南を向いている、南向き、なんこうと呼ばれるようになった」

炭鉱マンは、酒を酌み交わしながら、なんこで栄養を蓄え、仲間の絆を深めていたんですね。

そんな「なんこ」と私の出会いは、よさこいチームで活動していた大学時代。

歌志内市で毎年夏祭りのボランティア活動をしながら踊っていたのですが、そのなかで地元の人がふるまってくれたのが「なんこ」でした。

それ以来ちょっと癖のある味がとりこになり、私の家の冷蔵庫には…。

堀内美里アナウンサー
「なんこ・なんこ・なんこです」

三浦勝子さん
「はい」

堀内美里アナウンサー
「三浦さんお世話になります。おじゃまします」

大学生の時に「なんこ」をごちそうになった三浦勝子さん。

夫、勇さんは、元炭鉱マンです。

堀内美里アナウンサー
「おいしいですか?」

元炭鉱マン 三浦勇さん
「うまいっ!」

堀内美里アナウンサー
「お父さんが、食べてきたものは今もここに受け継がれているんですか?」

勇さん
「そう!この味」

主に家庭で食べられているなんこは、歌志内市の飲食店でも味わうことができます。

しかし、歌志内市内で提供しているのは2店舗のみで、意外な場所で食べられているんです。

歌志内名物「なんこ」。

主に家庭で食べられていますが、歌志内市の飲食店でも味わうことができます。

堀内美里アナウンサー
「「なんこ」が食べられるスナックなんですが…入ってみましょう」
「こんにちは」

スナックアルファー 幸子ママ
「いらっしゃいませ」

歌志内出身のママ、幸子さん。



「スナックアルファー」で去年「なんこ定食ランチ」を始めました。

昼時には、地元の人が続々集まって・・・。

市民に親しまれている味ですが、作るのは大変そうです。

堀内美里アナウンサー
「うわ!これは何ですか?」

スナックアルファー 幸子ママ
「これがなんこの原型です。」

堀内美里アナウンサー
「けっこうにおいしますね」

「生の」馬の腸の独特なにおいは、キッチン全体に広がります。

堀内美里アナウンサー
「下処理でどのぐらい時間かかるんですか?」

スナックアルファー 幸子ママ
「(下処理に)5時間かかる、3~4回洗って、1回湯がいて、それをまたさらに洗って、細かく切る」

そして、前日に煮込んでおいたなんこに、玉ねぎとつきこんにゃくを入れて、完成。

堀内美里アナウンサー
「ん~これです。この味!独特の癖があるんですが、それがおいしいんですよね。こんなにおいしい郷土料理が広まっていないのはおかしい、もっと広まってほしい」

なんこ定食を始めた理由を幸子さんに尋ねると…。



幸子さん
「なんこを食べられるところがないので始めた。なんとか無くしてはいけない、歌志内の名物を」

常連客
「いつも変わらないおいしい味」
「昼間食べるより、夜に酒のさかなの方が・・・」
「地方へ行った人も歌志内に帰ってきたらなんこを食べたいってなる」

今でも、人が集まると食卓に上がる「なんこ」。今年のお盆も…。

荒岡さん
「なんこできました」



子ども
「おいしい」
「もちもちしている」

おじいちゃん
「うーん、おいしい」

堀内美里HBCアナウンサー
荒岡利恵美さん
「親戚がみんなで集まってわいわいするときに作る」
「あって当たり前の感じで育ってきた。取材されると考えたことなかった」
「この味付けは、自分の家庭だけの味なので、そのうち伝授して」

長女 黒田紗保さん
「一度も作ったことがないのでこれから教えてもらいたい」

歌志内市出身ではない私もあたたかい気持ちにさせてくれる「なんこ」。

故郷の味は当たり前のようにそばにありますが、たくさんの人の想いによって守られ受け継がれていくと学びました。