今日ドキッ!トークライブ 「シッチを知った私たちにできること」
2020年10月25日 開催
湿原や川、湖など北海道は湿地の宝庫です。
湿地は、漁業や農業、観光のほか、防災や減災、生活用水の供給まで私たちの生活に欠かせない環境です。また国内にある湿地の経済価値は、気候調整や水質浄化など年間約1兆円(環境省調べ)と試算されています。その一方で、道内の湿地はどんどん減り続けています。石狩湿原は100年前と比べると99.95%が消失しているのが現状です。
そこで今回のトークライブは、湿地を守り育むための方策を考えるシンポジウム「シッチスイッチ」にお邪魔して「シッチを知った私たちにできること」というテーマで開催。湿地にどっぷりハマった石田麻子記者が、専門家2人と道内の湿地の現状と将来について語りました。
【出演】
矢部和夫さん(札幌市立大学名誉教授)
牛山克己さん(宮島沼水鳥・湿地センター)
石田麻子 HBC報道部記者
堀啓知「今日ドキッ!」キャスター
※トークライブの模様は動画(Youtube)でご覧いただけます
[動画はこちら]
堀 石狩湿原の99.9%が消失って本当ですか?
石田 1897年と比べて現在は0.05%しか残っていません。しかも現在も開発の波が押し寄せていて消失は現在進行形で進んでいます。
矢部 石狩湿原は人間の生活圏にあったのでこういう歴史をたどってしまいました。湿原にある植物や植生も今、レスキューしないと近い将来なくなってしまいます。
堀 そんな湿原はどんなポテンシャルを持っていますか?
石田 湿原には二酸化炭素の吸収などの気候調整のほか、水質浄化や生息環境の提供などを担っています。環境省はその経済価値を、年間約1兆円と試算しています。
牛山 湿地の経済価値は、世界全体でみると4,730兆円とも言われています。これは牛山林のおよそ倍で、湿地は非常に価値の高い場所です。
堀 湿地を保全する取り組みも動き出していますよね?
石田 「ミズゴケ里親制度」というのがあります。乾燥が進んでいる湿地などからミズゴケを採取して、家庭などで育てて湿地に戻すという取り組みです。人材派遣会社のパソナでは社内でスタッフがミズゴケに「シメコちゃん」などと名前を付けて楽しみながら育てています。最近SNSではハマることを「沼落ち」といいますが、参加者はみんな文字通り沼落ちしていました。こんな草の根の取り組みが湿地の保全につながればと期待しています。
牛山 触れることは、知ることの第一歩になります。
石田 当別町にある湿地では、ソーラーパネルの設置をめぐって地元住民と設置者が話し合った結果、設置場所が変更されるというケースがありました。これにより湿地への影響は少なくできました。
矢部 人は自然が多ければ多いほど心が健全でいられると思います。人は自然の中で癒されたり、自然の中で活動したりしたい生き物です。ところが札幌圏内には気楽に行ける湿地がありません。だから私は20年前、清田区の平岡公園に人工の湿地を作って植生の管理をしてきました。今では自然の湿原と変わらない感じになっています。身近なところに湿地をたくさん作り、そこで楽しんでもらうのが湿地を保全していく一つの策だと思います。
堀 湿地の現状を伝える放送局に何かアドバイスを。
矢部 湿地に関する情報発信をもっと積極的にお願いします。
牛山 川遊びやサケ放流など、すべて湿地でつながっています。トータルな意識を持って伝えていただきたいと思います。
堀 最後に一言…。
矢部 湿地に触れられる、湿地からの恩恵を受けられる都市を作っていきたいですね。
牛山 「湿地といえば北海道」といえる活動をしていきたいです。
堀 石田さん、湿地を取材してみて気づいたことは?
石田 私は取材する前、湿地に関しては全くの素人でした。でも北海道の名所は層雲峡だったり青い池だったり、湿地につながる場所がほとんどです。また世界に目を向けてもフランスのモンサンミシェルやアメリカのナイアガラの滝などことごとく湿地であることに気づかされました。そんな湿地の実態を知らないでいると、なくなっても気づかないままになってしまいます。それは怖いことだと感じています。湿地をもっと知ってもらうために伝えるというのは私たちテレビ局の役目だなと思いました。
堀 先日放送した「今日ドキッ!」の特集で「森は100年で回復するが、湿地は一度失ったら二度と戻らない」という言葉が印象に残っています。我々も視聴者が湿地のことを知るきっかけになるように丁寧に伝えていきたいと思います。