【備蓄米】3回目の放出へ…コメの価格はどうなる?専門店は「集荷合戦になっている」と落胆 専門家は「価格が下がることは考えられない」と指摘
2025年04月10日(木) 18時20分 更新
牛丼チェーン「吉野家」の牛丼弁当です。
コメの価格高騰が続く中、並盛はそのままですが、大盛りについては、10日から43円値上げされて、726円になりました。
コメの値上がりを食い止めようと、政府は3回目の備蓄米放出を決定。果たして、価格は落ち着くのでしょうか?
江藤拓 農水大臣
「夏まで毎月、政府備蓄米の売り渡しを実施する。なかなか消費者が備蓄米放出があったにもかかわらず、価格が下がったことを実感できていない」
9日、政府は、7月まで備蓄米を毎月、放出する方針を決めました。
その理由は、いっこうに下がらないコメの価格です。
コメ農政に詳しい 宮城大学 大泉一貫名誉教授
「今のやり方で価格が下がるかというと、これはちょっと疑問なのではないか」
追加の放出で、コメの価格は下がるのか、もうひとホリします。
全国のスーパーで販売されている最新のコメの平均価格は、5キロあたり4206円。
3月末までに13週連続で上がっていて、去年の同じ時期のほぼ2倍となっています。
札幌市内で2店舗を展開する格安スーパーです。
一番安いコメで、5キロの価格は3563円ですが、備蓄米の扱いはありません。
キテネ食品館 中塚誠社長
「(備蓄米の追加放出は)非常に歓迎する話ではあるが、私たちのところに回ってくるのかどうか全く見えない状況なので、(備蓄米を)放出したところで、ちゃんと全体的に回るような形をとってほしい」
平均価格よりも数百円安く販売していますが、備蓄米が追加で毎月放出されたとしても、流れてくるめどはなく、値下げどころか、価格の上昇が続くおそれがあるといいます。
キテネ食品館 中塚誠社長
「品薄感がずっと続いていますから、これから夏に向けてさらなる値上げもないとは言えない状況にあるくらい」
消費者も、備蓄米の放出で価格が落ち着いた実感はまだ薄いようです。
買い物客(50代)
「(他の店で)火曜日に(5キロ)2900円台だったので、北海道米10割だったので、それをちょっと買ってみました。備蓄米が出たら安くなると思ったが、大差なかったのでちょっとがっかり…」
買い物客(60代)
「(備蓄米を買ったことは?).買ってないと思います。備蓄米と書いてないということなので…いまの価格より1000円くらい安くて(5キロ)2500円くらいなら、買うかも…」
こめしん 德山大介社長
「(コメの)集荷合戦になっている影響で、どんどん価格が上がっているという状況」
釧路市と札幌市に店がある、コメの卸や小売りをする専門店です。
この店も備蓄米の入荷はありません。
備蓄米が市場に流通してはいるものの、すでにコメの価格が上がった後で、放出された量も、価格を下げるには不十分だといいます。
また、追加放出についても…。
こめしん 德山大介社長
「コメの相場が上がりきっている状況なので、それを下げるほどの効果は期待できない。今すぐの効果ではないが、(今年の)新米以降に向けて価格上昇の抑止には、一定程度の効果はあるかも…」
なぜ、備蓄米を放出しても価格は下がらないのでしょうか? 専門家は…。
コメ農政に詳しい 宮城大学 大泉一貫名誉教授
「(備蓄米)放出は入札で行う。政府が備蓄米として買った水準より高い価格で放出することになる。そうすると備蓄米を放出しても、末端で価格が下がることは考えられない。やっぱり不足感というのは、すごくまん延してしまっている。外食産業や小売り・卸業者にも出していくことをしないと、とてもコメの不足感は消えていかないのではないか」
■政府の備蓄米放出の全体像は?
政府の備蓄米は100万トン程度あります。このうち、一回目として14万2000トン、二回目として7万トンが放出されています。これから三回目で放出されるのが10万トンで、合わせると31万2000トンです。
日本の年間の需要は702万トンなので、放出する備蓄米は合わせて4.4%に相当します。
政府は、4回目以降の放出量について、「流通の状況を見て、改めて判断する」ということです。
■コメ農政に詳しい宮城大学の大泉名誉教授の見解
「備蓄米を毎月放出するという方法については、小出しに放出しても、不足感は取り除けない。50万トン、60万トンなど、まとまった量を放出すべきだ」
「政府が備蓄米を出す一方で、民間業者の在庫量は、秋に新米が出回るまでどんどん減少していくので、価格は下がらない見通し」
堀啓知キャスター)
政府には、備蓄米の放出だけでなく、コメの増産や、生産者の人たちへの支援など抜本的な対策を打ってほしいと思います。