冬の観光客は夏の3分の1に…最大6000円分の旅費をポイント還元で地域活性化を狙う “通過型の観光地”から脱却するための悩めるマチの秘策 北海道当別町
2025年02月17日(月) 18時45分 更新
ガソリン代の高騰などで、旅行にかかる費用も上がる中『旅費の一部を還元する』取り組みが、札幌市の隣の町で始まっていまます。
ジンギスカンを焼く美味しそうな音が聞こえてきます。ここは、人気店の『いとうジンギスカン』です。
岡田純ディレクター
「いま当別町では、町内に1泊して町内の人気飲食店で、食事をすると、お得なポイントをゲットすることができるんです」
取材に向かった先は、札幌市から車で40分ほどの当別町です。
当別町の観光協会が、去年12月に導入したのが、アプリを活用して、旅費の一部を観光客にポイントで還元する仕組みです。
T&T 辻野修太朗社長
「何らかの形で町の経済効果ですね、そこを高めていただける」
北海道医療大学が、北広島市に移転することになり、地元経済の停滞が懸念される当別町。
観光客や交流人口を増やす新たな一手とは、一体どんな取り組みなのでしょうか。
観光協会事務局・藤澤潮音さん
「冬季間、こうやって雪の多い地域になるので、冬になると“夏の3分の1”とか、それくらいまで、どうしても(観光の)お客さんは少なくなってしまう」
そこで、当別町観光協会が導入したのが『フリートラフィック』という、スマホやパソコンで使うアプリです。
まず“当別町に旅行したい人”が、アプリで出発地と目的地の位置情報を登録。
AIが“車で移動した場合の交通費”を計算し、ポイントを還元します。
観光客がもらえるポイントの上限は1泊当たり6000円分。
ポイントを獲得するには、町内に宿泊することと、店で食事や買い物をして、一定のお金を支払うことなどが条件です。
観光協会事務局 藤澤潮音さん
「どうしても通過型の観光になってしまう…。なので、より町内全体を周遊していただきたい」
駅も新設されて、外国人も多く訪れるロイズの体験施設など、昨年度、観光客数が過去最多となった当別町。
ただ、道の駅など、人気の観光施設は、札幌市寄りのエリアに集中していて、観光客に、ほかの地域も回って楽しんでもらおうと、旅費のポイント還元を企画しました。
こうした取り組みに期待するのが、当別町の中心部よりも、さらに北にある中小屋地区で、去年11月にオープンした宿泊施設『サイレント・キャビン』です。
T&T 辻野修太朗社長
「今まで、インバウンドの方々とかが多かったんですけれども、(アプリの)“フリートラフィック”さんに掲載させていただいてからは、日本人の方の問い合わせですとか、予約件数が増えてきました」
「町にとどまっていただく、というところで何らかの形で町の経済効果ですね、そこを高めていただける」
アプリによって、施設同士の”相乗効果”も期待できると考えるのは、当麻町内をはじめ、札幌市からの客も多い温泉施設『ふとみ銘泉万葉の湯』です。
ふとみ銘泉万葉の湯 黒滝雅美 副支配人
「ほかの参加店舗と言いますか、そういった部分も情報共有してもらえれば(協力して)町の活性化という部分で、僕らもお手伝いできると思います」
このアプリを開発したのは、地元・当別町出身の男性が社長を務めるスタートアップ企業です。
アプリを開発したFourwin 永瀬駿平社長
「人が移動すると恩恵を受けるのって、その人自身だけではなくて、その移動先の自治体だったり、宿泊施設とか飲食店とか、様々な人が恩恵を受けるんですけれど、たった1人が100%交通費を負担しているのっておかしいな、と」
「そこをちゃんとみんなで支払えば、本来の(旅行の)ハードルに戻るんじゃないかと…」
原油高や円安などを背景に、ガソリン代などが高騰する中、旅費の一部を還元することで、町に足を運んでもらう取り組み。
当別町のように、人気の観光施設や大きなイベントがない自治体にこそ、導入のメリットがあるといいます。
アプリを開発したFourwin 永瀬駿平社長
「閑散期に人が呼べる状態になるので、そうすると、そこに新規参入するプレイヤーが増えたりだとか、いっぱいいい影響があって、どんどん観光のコンテンツが充実していくというのが理想な流れかなと思ってます」
一方、アプリをより有効に活用してほしいと、こんな意見もあります。
町の中心から少し離れた、畑や水田の中にある寿司店です。人気のランチセットは1500円で、町内の学生をはじめ外国人も訪れています。
町の活性化に向けて、年間を通じた活用に期待します。
鮨銀鱗 木下弘一さん
「いま、いろんな意味で当別町、疲弊し始めていますからね、いろんな意味でね…学生さんもいなくなる。交通状況も悪くなる。やっぱり、通年やれるものなら、やったほうがいいかと思いますよ」
堀内大輝アナウンサー)
改めて、北海道当別町で取り組みが進められている、旅費の一部を還元する仕組みです。
●【ポイント獲得には…】
・出発地と当別町の距離からAIがポイントを計算。
・往復のガソリン代が基準で、当別町の場合、1泊6000円分が上限。
・還元されたポイントはPayPayなどに交換可能。
●【ポイント還元を受けるためには…】
・宿泊と店舗での飲食に、それぞれ還元額の半分以上を消費。
・例えば、還元6000円分の場合、宿泊と店舗で各3000円以上を使う必要がある。
旅行した人が、当別町内で少なくとも、もらえるポイント分以上のお金を使ってもらう仕組みになっているんです。
一方で、課題もあります。
このポイント還元分は、観光協会の予算で賄っていて、初年度ということもあり今回は、総額20万円となっています。
こちらは、年度内には全額利用される見通しです。
現在は、参加する宿泊施設や店舗が10軒ほどにとどまっているので、観光協会では来年度以降、もっと拡大していきたいと話しています。
堀啓知キャスター)
まだ広くは知られていない取り組みですが、こうした新しい発想で、地域の魅力や新しい経済の掘り起こしになっていけばと思います。