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M7以上の後、巨大地震に備える『後発地震注意情報』低い認知度が課題、専門家「避難場所の確認など、準備レベルを上げて」【胆振東部地震から6年】

2024年09月02日(月) 19時48分 更新

胆振東部地震の発生から、9月6日で6年。

自分と大切な人の命をどう守るのか。

「今日ドキッ!」では9月2日から1週間、防災について考える話題をお伝えします。

北海道にも切迫する巨大地震。その可能性が高まっていることを知らせる仕組みがあります。

しかし、住民の声から課題も見えてきました。

8月、初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報」。気象庁は、地震発生後、巨大地震の可能性がふだんより高まっているとして、命を守る手立てを確認するよう呼びかけました。



道内でも危機感が…

釧路町防災安全課 藤井正樹 課長
「今回南海トラフ地震臨時情報が出た。北海道でも巨大地震がいつ発生してもおかしくない」

こう話すのは、北海道東部の釧路町の防災担当者です。

千島海溝沿いで東日本大震災クラスの地震が、今後30年以内に起きる確率は7%~40%、最悪の場合、死者は道内で10万人にのぼると推計されています。



南海トラフ地震の臨時情報と同じようなしくみが、北海道にもあります。「後発地震注意情報」です。

北海道沖などでマグニチュード7.0以上の地震が起きたあと、さらに巨大地震が起きる可能性が、ふだんより高まっているとして、すぐに避難できる準備をするよう、1週間呼びかけるものです。

道内では63の市町村が対象です。



釧路町防災安全課 藤井正樹 課長
「ふだんは釧路町役場職員の休憩室。災害時に避難所として開放して寝泊りする」

「注意情報」は事前の避難を呼びかけるものではありませんが、釧路町では自主避難をする人がいれば受け入れるとしています。

一方で…

釧路町防災安全課 藤井正樹 課長
「(後発地震注意情報が)初めて出たときは、住民は何の放送なのかわからず慌てて避難する人もいると思う」



釧路町防災安全課 藤井正樹 課長
「われわれも、避難訓練や防災研修でチラシを配布して普及を図っているが、参加者も多くないので浸透していない」

釧路町に住む高橋さんです。

妻 高橋裕子さん(67)
「ろうそくとか、懐中電灯とか…」



地震への備えは欠かしません。

しかし、「後発地震注意情報」について聞いてみると…

(後発地震注意情報を知っている?)

妻 高橋裕子さん(67)
「一応。テレビか何かで…」

夫 高橋洋明さん(74)
「全然わからない」

認知度の低さは、データからも明らかに。

道内の1800人に「後発地震注意情報」について尋ねた研究では、「知らない」「具体的にわからない」とした人が7割に上りました。



関西大学(地震防災・地震学) 林能成教授
「(後発地震注意情報は)非常にわかりにくい情報。出たからといって、地震が起きる可能性もものすごく低い。」



「北海道の場合は、南海トラフ地震臨時情報よりも報道されていないし、知られていないから、(発表されても)無視されてしまう可能性が非常に高い」

肝心な、避難所の整備にも遅れが…

高橋裕子さん
「うちらは、どこに逃げたらいいんだろうかなと」

道内最大、26.5メートルの津波が想定されている釧路町です。

ナギーブモスタファ記者
「釧路町では4基の避難タワー建設を予定していて、すでに大部分が完成しているものがある一方、5月から始まる予定だった公園では工事が始まっていない」

国の財源不足で2024年度の補助金が減り、4基のタワーのうち1基の工事が延期されました。

釧路町防災安全課 藤井正樹 課長
「今後契約して、令和7年度(来年度)の冬までには完成するのでは」

避難タワー予定地のそばに住む高橋さん。

自宅から一番近い避難所は歩いて10分ほどですが、釧路川河口には33分で津波の第1波が到達するとされていて、猶予はありません。

高橋裕子さん
「安心して逃げられると思ったが、1年間遅れるのは不安」

高齢の住民も多く、すぐに避難できるタワーの建設は必要不可欠です。



北見団地町内会 小野恵三会長(77)
「基本は命を守るということだから。国で号令をかけている部分はいい、国土強靭化みたいな。そうだとすればもう少し住民のことを考えてほしい」

気象庁は「後発地震注意情報」が出たときに、巨大地震が起きる確率は100分の1程度だとしています。

ただ、関西大学の林教授の研究では、この確率を正しく認識している人は、100人中5人程度しかいませんでした。

実際に注意情報が発表されたらどうすればいいか。

林教授は「”100分の1”が、1回目で当たるかもしれないし、99回当たらないかもしれない。避難場所を見に行ったり、自宅を片づけたりするなど、避難できるための準備レベルを上げておくといい」と話しています。

南海トラフ地震の臨時情報が出たこの機会に、北海道で起こりうる地震や、その後の対応についても今一度確認しておくことが、身を守ることにつながります。