「秘湯」との呼び声も高い北海道十勝地方の足寄町にある野中温泉。1月、建物がほぼ全焼するなか、「看板猫」とともに再開に向け歩み始めています。
2025年02月25日(火) 19時18分 更新
「秘湯」との呼び声も高い北海道十勝地方の足寄町にある野中温泉。1月、建物がほぼ全焼するなか、「看板猫」とともに再開に向け歩み始めています。
雌阿寒岳のふもと、開湯112年の歴史を誇る「山の宿 野中温泉」です。
豊かな温泉と看板猫たちが名物で、登山者や地元の人びとに愛されています。
しかし、1月23日の夕方、状況は一変します。
厨房から出たとみられる火が旅館に広がり、ほぼ全焼してしまったのです。
当時は客がおらず、ここに住んでいた代表の野中祐子さんも逃げて無事でしたが…。
山の宿 野中温泉 野中祐子代表
「呼び続けたんですけど、なかなかみつからず、あと1匹『どぅ太』が出てきてない。臆病だったので相当怖かったんだと思う」
無事だった猫のうち、5匹は野中さんの姉の家に避難。
いま野中温泉にいるのは『シャム』1匹だけです。
黒いがれきとなってしまった母屋。焦げた臭いが漂い、煤だらけとなった客室。
野中さんの家財道具もほとんど焼けてしまいました。
電気や水道も止まったままで、営業再開の道筋は立っていません。
ただ、希望も残っています。源泉かけ流しの自慢の硫黄泉が無事だったのです。
山の宿 野中温泉 野中祐子代表
「こういうところから始めようって、一歩一歩きれいにして、どろどろだったのでみんな掃除してくれて」
地元のボランティアも駆けつけ、がれきの撤去を手伝っています。
山下 昇さん
「生まれてからずっと野中温泉があるわけだから、維持してほしい。再建してほしい」
再開を待ち望むのは、地元の人だけではありません。
火災のあと、全国のファンから野中さんや猫たちを心配する声が相次ぎました。
その声に応えようと、野中さんは、猫の変わらず元気な姿を動画で発信しています。
山の宿 野中温泉 野中祐子代表
「『大変だけどこれから頑張って』と私たちを鼓舞してくれる言葉とか、『必要なことがあったらいつでも駆けつけるから』という声。『ありがとう』という言葉が陳腐なくらいありがたいと思っています」
たくさんの人の心と体を癒した温泉が、今度は温かい気持ちに支えられ、一歩一歩、歩んでいます。