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路線バスの廃止や減便が相次ぐ札幌市 1日400人以上が利用する『循環バス』を地域住民で存続へ“3者協働”の取り組みとは?

2025年02月25日(火) 20時24分 更新

 路線バスの廃止や減便が相次ぐ札幌市で、住民たちが立ち上がりました。その取り組みとは?

伊藤凜記者
「午前10時です。JR厚別駅前のこちらのバスには多くの利用者が乗られています」

北海道札幌市のJR厚別駅を起点に、新さっぽろ駅などを回る路線バス=『厚別ふれあい循環線』。

買い物や通院など、住民の暮らしを支える「地域の足」です。



バス利用者
「(よく利用している?)週に1回くらい買い物で…」
「(新さっぽろへ)病院へ来たりとか買い物に来たりで使います。足がちょっと悪いので、ここまで来るのに(バスがないと)15~20分歩く…」

去年、バスを運行する北海道中央バスは、運転手不足などを理由に3月末での廃止を決定しました。

そこで立ち上がったのが、地域の住民たちです。

厚別中央町内会連合会 田中昭夫会長
「(運行を)受けてくれるバス会社があるのかというのが一番の課題」

札幌市でも路線バスの廃止や減便が相次ぐ中、地域住民が主体となり、路線存続につなげた取り組みを「もうひとホリ」します。

厚別中央町内会連合会 田中昭夫会長
「ここは高齢の人が買い物とか病院に行く人が多い」



『厚別ふれあい循環線』は、JR厚別駅を起点に、地下鉄東西線の「ひばりが丘駅」や「新さっぽろ駅」、東商業高校などを回る循環バスで、1日400人ほどが利用しています。

しかし、去年6月、運転手不足や路線の集約化などを理由に廃止が伝えられました。



厚別中央町内会連合会 田中昭夫会長
「正直(廃止を)聞いたときは(何も)考えられなかったです。なぜ?という(思い)だけですね」

札幌市には、バス路線などが廃止される地域で代替交通を導入する制度がありますが、『厚別ふれあい循環線』の場合は、半径500メートル以内に代わりになる他の路線バスのバス停があることから、札幌市が主体となって代替交通を導入する基準を満たしていませんでした。



厚別中央町内会連合会 田中昭夫会長
「ここら辺(JR厚別駅周辺)の人が、一番いま使っている人たちが(バス停が)なくなる…」

廃止路線は、1日400人以上が利用し、既存の公共交通だけでは対応が困難として、田中さんたちは町内会などを中心に『検討会』を立ち上げ、路線の存続を札幌市に訴えたところ、市側から提案されたのが札幌市、地域住民、バス事業者の3者で代替交通を導入する『地域交通支援制度』でした。



札幌市都市交通課 佐藤亮佑さん
「地域の皆さんが主体となって、地域内の交通の利便性を高めるために、新しい交通手段を確保しようとする取り組みを支援する制度。運行経費の補填といった財政的支援と運行計画の助言や法手続きのサポートなど技術的支援を行う」



札幌市、地域住民に加え、バス事業者には、貸切バスを運行する『札幌観光バス』が名乗りを上げました。

札幌観光バス 佐藤圭祐 常務取締役
「われわれのような(貸切バス)事業者が公共交通というところに、何らか携わらせていただく機会があるのは非常に面白い枠組みができた」

去年、創業60年を迎えた札幌観光バスは、北見市で路線バスを運行する『北見バス』を子会社に持ち、路線バスの運転経験があるドライバーもいることから、今回の運行を決めました。

決め手になったのは、住民たちの「熱意」だったといいます。

札幌観光バス 佐藤圭祐 常務取締役
「これは自分たちのバスだと、自分たちで残していくんだ、だからしっかり利用促進していこうというすごく強い意思と、実際取り組みもすでに始めていて、60年間地元で(事業を)しているわれわれにとって1つ、地元に貢献させていただく機会が生まれたと思う」



便数は1日25便から15便に減り、運賃も現在より60円高い、300円になりますが、これまでと同じルートで運行できることになりました。

札幌市の支援制度を使い、行政と地域住民、バス事業者の3者が協力して代替交通を導入するのは、初めてだということです。



厚別中央町内会連合会 田中昭夫会長
「今回、私たちもその組織に入りますから、一緒に札幌市と札幌観光バスと私たちは3者で協定を結んでやる。完全に(バス路線は)自分たちの財産ですから、そういう意識を(住民の)皆さんに持ってもらうということが大事」


■『厚別ふれあい循環線』(4月~)

森田絹子キャスター)
4月以降、『厚別ふれあい循環線』がどうなるのかというと、札幌市で初めてのかたちですが、地域住民、札幌市、バス事業者の3者が協力して、バスを運行します。運賃は、現在の240円より60円上がって、300円になります。便数は、25便から減って、1日15便になりますが、バス停の数は現状と変わりません。

今後の札幌市ですが、1年目は運行費用の全額を補助します。2年目以降は、最大50%の補助に減額されるため、3か月ごとに運行実績を確認しながら、収支率50%を目指します。つまり、運行経費の半分を利用者からの運賃でまかなえるかということですが、これは1日200人ほどバスに乗ればクリアすることができる数字だそうです。

3月17日に、住民向けの説明会が開かれる予定で、使用される車両もお披露目されるということです。

北海道ニュース24