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難病患者に寄り添う29歳の医師が開発 未成熟リンゴを活用した特製タルト誕生 半年かけて完成 北海道

2024年09月05日(木) 20時22分 更新

 北海道大学出身の若手医師が、ある難病の患者に寄り添ったリンゴのタルトを開発しました。
味と食感とともに使われているリンゴにも秘密がありました。

甘酸っぱいリンゴのコンポートにサクサクの生地。そして、チョコレートにもこだわりが詰まっています。



作ったのは、北大の医学部出身で、東京の病院で働く医師の中村恒星さん(29)です。

中村恒星医師
「僕も食べました。最高でした」



実はこのタルト、ある病気の人たちでも食べやすいようにと作られたものです。

試食するのは、宮本恵子さん(69)。

「表皮水疱症」という、わずかな刺激でも皮膚に水疱ができてはがれる、10万人に1人の難病を患っています。



口や食道の粘膜も弱く、液体やゼリー状の食べ物しか喉を通らないこともあるといいます。

表皮水疱症友の会 宮本恵子さん
「私は好き。子どもにも食べてもらいたい。生ではリンゴを食べられないから」



2人が知り合ったのは、6年前。



当時、北大の医学生だった中村さんに宮本さんたちから「食べられないことでコミュニケーションも減ってしまう」という悩みが寄せられました。

そこで中村さんは、口の中でよく溶けのども通りやすいチョコレートを開発しました。



北海道大学 医学部3年(当時) 中村恒星さん
「家族と当事者と同じものを同じ空間で食べられるシチュエーションを作れるのは(患者の)心の面で大きかった」

タルトには、開発したチョコレートを使用。また、タルト生地は通常より柔らかく焼き上げましたが、サクサク感は残しました。

表皮水疱症友の会 宮本恵子さん
「食べやすいだけじゃなくて、おいしいものを作ってくれることに皆さんありがたいって」

さらに、リンゴにも秘密があります。

ニトリ観光果樹園 似鳥靖季社長
「これが未成熟のリンゴが入っている箱」

果樹園では質の良いリンゴを育てるため、大きいものを残し、周りの花や実を間引く作業が必要です。

ニトリ観光果樹園 似鳥靖季社長
「ものすごい量の青い小さいリンゴが落ちているのを見て『これ何ですか』と言われて」



「捨てられるのはもったいない」と、目をつけた中村さん。

タルトには廃棄される予定のリンゴを加工していたのです。

リンゴの良さを残しつつ、食感も楽しめるように。いかにして「果肉感」を残すか。半年かけて完成させました。

中村恒星医師(29)
「いろいろな商品をつくることで、いろいろなお客さんの入り口が増えて、病気のことを知ってくれている人の総数を増やすというのが大きな目標」



「北海道に恩返しをしたい」。

中村さんは新しいタルトで患者と北海道の一次産業を応援します。