日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に備え…被災する前に復興のコンセプトを明確化「事前復興計画」むかわ町が策定、専門家「速やかに復興に移れる可能性」
2025年03月24日(月) 19時31分 更新
日頃から災害に対する備えが必要とされる日本。そんな中、北海道むかわ町では、道内で初めて、ある計画が策定されました。
胆振地方のむかわ町。およそ2年かけてまとめあげたのが…
むかわ町竹中喜之町長
「北海道では初めての事前復興計画の策定作業」
災害の「前」に復興を考えるという、この計画。胆振東部地震での被災がきっかけでした。
むかわ町情報防災対策室梅津晶室長
「これはどうする、あれはどうするという問題が矢継ぎ早に出てきて、日々こなすだけで精一杯だった」
「事前復興計画」とは?もうひとホリします。
■被災する前に復興計画
2018年9月6日に起きた、胆振東部地震。むかわ町では、最大震度6強を観測。1人が死亡。3300戸を超える住宅が被害を受けました。
あれから6年半。いま、さらなる震災が懸念されています。それは…日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震です。
マチの中心部が海沿いにあるむかわ町。被害想定では、津波の高さは最大12メートル。町の広い範囲が津波に襲われ、最悪の場合、町の人口の3割に当たる2300人が死亡するとされています。
そこで、「災害を防ぐ」だけでなく、「被災後のまちづくり」についても、あらかじめ考えておこうと計画されたのが、この「事前復興計画」です。
北海道大学院地震火山研究観測センター 高橋浩晃教授
「被災した後に復興計画を作ろうとすると長い時間がかかってしまう。住民も事業者も待っていられなくて、人口が流出してしまうことが東日本大震災でも多く見られた。どういうコンセプトでマチを復興する、ということを事前に考えておくだけで、被災の時に速やかに、実際の復興に移れる可能性がある」
■被災後10年間を4段階のフェーズ分け
計画では、災害が起きてから10年目までを4段階の「フェーズ」に分け、それぞれの「まちづくりイメージ図」を初めて記しました。
例えば、災害が起きてから半年後までの「復興まちづくりイメージ図」では、津波浸水が大きいと想定される、国道より海側の地域を「居住禁止区域」と定め、応急仮設住宅や、災害廃棄物置き場の場所を明示しました。
その後の、被災して4年目から6年目までのイメージ図では、国道や堤防のかさ上げも検討されています。
さらに、農地や漁業施設など「産業」の復旧に加え、「子ども・子育て施設」の候補地が設けられるなど住民の「暮らし」にも焦点が当てられています。
むかわ町情報防災対策室 梅津晶室長
「住宅の再建が自力で、できない人のための災害公営住宅をここに建てたらよいのではないか」
仮設住宅を出たあとに被災者が住む「災害公営住宅」。いまの計画では、海から離れたところにある町有地につくることになっています。
土地の買収手続きをせず、速やかに建設に着手できるということです。
むかわ町情報防災対策室 梅津晶室長
「(胆振東部地震の経験で)事前に決めごとをしておかないと、速やかな復興というのは絶対に無理だと体感している」
復興計画にも携わった、北海道大学の高橋教授は…
北海道大学院地震火山研究観測センター高橋浩晃教授
「(まちづくりというと)道路を作ったり橋を作ったりをいうことをイメージしがちなのですが、実はまちづくりで一番大切なのはそこに住んでいる人なんですね。心のケア、健康のケアをどうやっていくのかが非常に大事になってくるので、町の保健福祉や医療、いろいろな部署の方が入られて作られたことが大事。先進的な取り組みだったんじゃないか」
■「事前復興計画」策定は全国の市町村で2%
こうした「事前復興計画」ですが、実際に策定されているのは全国の市町村でもわずか2パーセントにとどまりました。
国交省のまとめによりますと、道内では今回のむかわ町は「初めて」だということです。
道内のほかの自治体に聞いてみたところ、例えば釧路市では…
釧路市の担当者
「日本海溝・千島海溝沿いの大地震や津波が予想されている。だからこそ発災後の「復興」よりも、まずは避難。市民の死者ゼロを目指す。そこのベースを整えてから災害が起こった後の計画をする予定」
■高橋浩晃教授
・災害前にマチの魅力を再確認し復興のコンセプトを明確にしておくことが重要
・むかわ町の策定ノウハウを基にほかの市町村でも計画策定が進むと期待
堀啓知キャスター)
復興のコンセプトを明確にしておくことで、みんなが同じ方向を向いて立ち上がれる、リスタートできるかなと思います。防災をすることで減災につながる。減災できると復興しやすくなる。どれも切れ目なく事前に計画を作っておくことが大事なのかなと思います。