北海道に全国トップクラスの初任給42万円の企業が…超売り手市場の中で人材確保をめぐる競争が激化 道内企業の6割以上が賃上げを見込む一方で価格転嫁の動きも
2025年04月24日(木) 20時09分 更新
若い人材を確保するため、初任給を引き上げる企業が増えています。なかには40万円を超える企業も出てきています。
◆《人材獲得競争が激化…初任給30万円時代へ》
北海道電力 齋藤晋社長
「活気あふれる皆さんが、われわれの仲間に入っていただける…、lこれは社員一同歓迎しています」
入社式から約1か月。新入社員にとっては、初めての給料を受け取る時期です。
大手企業を中心に“初任給30万円時代”とも言われる中、北海道内には、さらに上をいく企業が現れました。
北の達人コーポレーション 採用担当 濱田浩太郎さん
「新卒で月給24万円を設定しております」
初任給の引き上げが、激しさを見せる背景には、どんな事情があるのでしょうか。
北海道中小企業総合支援センター 塚崎敏久理事
「やはり人材獲得競争が、人手不足を背景に激しくなっている」
ついに40万円時代の到来なのでしょうか。全国的に広がる初任給引き上げの事情を探りました。
◆《全国トップクラスの初任給42万円の道内企業とは?》
さっぽろ創生スクエアの25階です。札幌の街並みが一望できる一等地。ここにオフィスを構える企業が『北の達人コーポレーション』です。
2000年に創立し、化粧品や健康食品の企画・製造販売を手がけています。前期の売上高は118億円に達します。
今年度の大卒の初任給は、昨年度から4万円引き上げて月額42万円です。
北の達人コーポレーション 採用担当 濱田浩太郎さん
「そもそも給与は、社員が生み出す価値の対価であると考えていて、だからこそ、早期に実力を発揮して、ビジネスパーソンとして成長していくっていうことを前提に、その実力に見合う報酬っていうの提示している」
帝国データバンクによりますと、初任給引き上げの動きが全国で広がる中、30万円以上に設定している企業は1.7%に留まります。
初任給を全国トップクラスの42万円にした理由は、どこにあるのでしょうか。
北の達人コーポレーション 採用担当 濱田浩太郎さん
「優秀な人材の確保だったり、会社としての魅力発信という点で、今回の取り組みっていうは、すごい意味のあるものだなと」
◆《人材確保の悩み…企業が求められるのは安定性や高待遇》
背景にあるのは人手不足です。就活生に優位な“超売り手市場”といわれる中、企業は、魅力的な待遇を用意しなければ、優秀な人材を採用できない状況に直面しています。
若い世代は、会社選びで何を重視しているのでしょうか。
社会人3年目
「福利厚生、住宅の手当とか、休みが取りやすいとか」
新入社員
「やり甲斐やりとかも、いろいろ考えてたんすけれど、初任給はいまの時期、物価高とかあるので、考える面の一つではあるかなって考えてます」
初任給をもらった新入社員
「一気にすごい大量のお金が入ってくるのが、めっちゃ嬉しかったです。お金の面っていうのは、私あまり見てなかったんですけれど、こうやって働いていると、やっぱりお金って大事だなって思います」
マイナビが来年卒業する大学生を対象に行った調査では、企業を選ぶポイントについて、次のような回答がありました。
・【安定している】51.9%。
・【自分のやりたい仕事ができる】27.2%。
・【給料が良い】25.2%
「安定」と「給料が良い」が、経済的不安を受け、近年、増加傾向を示しています。
ただ、人件費は企業にとって大きな負担です。北海道内の中小企業を相手に、経営相談に乗る機関の担当者は、企業を取り巻く環境は、厳しさを増していると指摘します。
北海道中小企業総合支援センター 塚崎敏久理事
「賃上げは、本当はしなければならないが、賃上げするには、資金的な原資が必要となるので、賃上げできない企業も中にはあると思う」
北海道中小企業総合支援センター 塚崎敏久理事
「経営というのは人・モノ・金・情報と言うが、その人の部分が、より経営者の悩みとして、今クローズアップされているのでは」
◆《6割を超える道内企業が賃上げを見込むが、原資確保には価格転嫁も…》
堀内大輝アナウンサー)
北海道内でも、賃上げの動きは進んでいるようです。
帝国データバンク札幌支店の渡辺雄大情報部長によりますと、道内企業の6割以上が、今年度の賃上げを見込んでいるとのことです。
ただ、賃上げによる人件費高騰の手立てとして、企業は商品やサービスに価格転嫁する必要があると指摘します。
そのためには、取引先との情報共有、そして賃上げした企業への助成など、さらなる「国の支援体制の強化」が求められるとしています。
堀啓知キャスター)
利益を削って、人件費に充てている企業も多いでしょうから、事業を継続するためにも支援が欠かせないといえますね。
◆《倍率が約50倍になった自治体…年功序列から成果型の給与体系へ》
堀内大輝アナウンサー)
一方で、人材を確保するために 「初任給日本一」をうたう地方自治体があります。
(
大阪の和泉市は、地方自治体の“初任給日本一”をうたっていて、昨年度、大卒程度の初任給を19万1700円から22万2300円に、約3万円引き上げました。
今年度は、人事院勧告を参考にしたベースアップもあり、いま24万5500円になっています。
例えば、和泉市の事務職の申込者数を見てみると、338人から549人と、この3年で約1.6倍に増加しています。
また既存の職員の給与体系も変わりました。昨年度の初任給引き上げに合わせて、いわゆる年功序列の給与体系をやめて、職務に応じて、給与を支給する制度に変更しています。
つまり、昇格しないと給料が増えない仕組みに変わっています。
堀啓知キャスター)
民間も行政も、成果に応じて賃金が上がる環境が整えば、働く側のモチベーションアップにつながるのではないでしょうか