泥流に飲み込まれたわが家…2000年の有珠山噴火から25年「記憶の伝承」と「住民の高齢化」課題を抱えるふもとの町で次の噴火に備える 避難のカギは“共助”
2025年03月31日(月) 19時43分 更新
25年前の3月31日、北海道胆振地方の有珠山が噴火しました。次の噴火に備えて何ができるのか。「記憶の伝承」と「高齢化の課題」を抱える町を取材しました。
・洞爺湖有珠火山マイスター 荒町美紀さん
「すごい久しぶりに来た」
胆振地方の洞爺湖町に住む荒町美紀(あらまちみき)さん。
・洞爺湖有珠火山マイスター 荒町美紀さん
「あの建物が私が住んでいた団地で桜ヶ丘団地っていう名前の団地です」
25年前の団地です。
・洞爺湖有珠火山マイスター 荒町美紀さん
「今だと下から3つ目、本来は4階なんですけど、あの窓のところですね。あそこがもともとのわが家でした」
「柵が大きく壊れているところです。あれだけ壊れているっていうことは、大きめの噴石が当たったのかな」
ここ桜ヶ丘団地は、2000年の噴火により泥流が流れ込み、噴石と火山灰が降り注ぎました。1階部分は泥流で完全に埋まっています。
・洞爺湖有珠火山マイスター 荒町美紀さん
「自宅の裏が有珠山の裾野ということも知らなかった。有珠山が噴火するかもしれないけど、うちは大丈夫だろうなという気持ち」
荒町さんは噴火の2日前に避難をしました。『戻れないかもしれない…』そんなことは微塵も考えなかったと言います。
・洞爺湖有珠火山マイスター 荒町美紀さん
「何が一番って子どもたちのアルバムを持って出なかったので、それだけは無事でいてほしいなっていう気持ち」
噴火から数か月後、2度ほど一時帰宅できたため思い出のアルバムは持ち出せたものの、二度とこの場所で暮らすことは叶いませんでした。
「まさか」の経験…これが大きなきっかけとなり、有珠山の正しい知識や、噴火の記憶を語り継いでいく『洞爺湖有珠火山マイスター』の資格をとりました。
・洞爺湖有珠火山マイスター 荒町美紀さん
「2000年は自宅は失くしても命はなくさなかった、犠牲者が出なかったが、次の噴火はそうはいかないということもある。この地で暮らすためには有珠山のことを知っておかないと」
有珠山の噴火の周期は、20年から30年といわれていて、今年はその中間点にあたります。
2000年の噴火を予知した有珠山研究の第一人者、北海道大学の岡田弘(おかだひろむ)名誉教授。火山活動に関する監視能力は、25年の間に機材面では格段に整備が進んだとしながらもある懸念を指摘します。
・北海道大学 岡田弘 名誉教授
「(25年の間)東北とか北海道では、社会的に影響のある噴火は起こらなかった。危機感を体験できる、現場を経験することは全くできなかった。(災害の現場で)役に立つのは"人"なんですよ。危機感をもってそういうことに対応できる、コミュニケーションができる、そういう人を育てているかといったら、これはかなり怪しい」
その懸念は、避難の現場でも…。
有珠山のふもとに位置する洞爺湖町。一時避難場所の設置や、噴火警戒レベルに合わせた避難など、避難の計画は25年前に比べて整備されてきました。
ただ、町民の避難を主導する自治防災室は、課題のひとつに「高齢化」をあげます。
・洞爺湖町・総務課自治防災室 平間剛志室長
「実際に避難するときに1人で避難できないとか、交通手段を持たない人がいる」
洞爺湖町で65歳以上の年齢が占める割合は、2000年の噴火の際は25.3%でしたが、25年で倍近くまで増えていて、今後も増え続けると予測されています。
洞爺湖温泉地区に50年以上住む宮崎秀雄(みやざきひでお)さん、77歳。これまで2回の噴火を経験しています。4~5年前から防災への意識が変わってきたといいます。
・宮崎秀雄さん(77)
「全く同じ避難があるわけじゃないから、その都度あればいいなというものを…。これはロウソクです。これで15時間燃えています」
年齢によるものも大きかったと話します。
・宮崎秀雄さん(77)
「(25年前の)52歳のときはすごく若かったから馬力があった。その前の噴火のときは30歳だからもっと馬力あった。この歳になると、しゃがんだり立ったりするのも大変なときもある」
「みんな同じように年をとってきている。走ることもできないし、いざ逃げろって言われても体が動かない」
高齢化によって、これまでより避難に時間を要する人が増えています。1人で避難ができない人に対しては、避難の際に必要な配慮や支援をする人を決めた「個別避難計画」を作りました。
しかし、支援をする側にも高齢者がいるといいます。
・洞爺湖町・総務課自治防災室 平間剛志室長
「必ず救助にいくというのは人員的にも限界があるから、行けない場合も多々あると考えておいて、自分の力と周りの助けを上手に生かしながら避難行動をとってもらいたい」
洞爺湖有珠山火山マイスターの荒町さんは、4年前に新たな資格をとりました。
・洞爺湖有珠火山マイスター 荒町美紀さん
「『防災介助士』という資格をとりました」
『防災介助士』は、障害者や高齢者など、自力での避難が難しい人たちの避難方法の知識を持つ人です。
荒町さんは地域の人たちにこういった知識を伝えていきたいと話します。
・洞爺湖有珠火山マイスター 荒町美紀さん
「私はおじいちゃんおばあちゃんとか障害のある人には、自助もそうだけど共助が大切だと思っていて、周りがちゃんと助けてあげる、周りとともに助かるっていうのが一番重要だなと思う。誰も取り残さないという、みんながやらないところを私がやっていければいいな、そういう思いが強い」
ともに助け合う、『共助』の力をどこまで活かせるか、高齢化が進む町の課題です。
世永聖奈キャスター
北海道大学の岡田弘(おかだ・ひろむ)名誉教授は、有珠山は噴火の前に体に感じる地震など前兆活動があるとしていますが、2000年の時のように避難に十分な時間があるとは限らないとして、余裕があると考えていると困ったことになる恐れがあると話しています。
堀啓知キャスター
高齢化というのは、取材した洞爺湖町だけではなく、どこの町でも抱えている問題だと思います。いざというときに、誰も取り残さず避難できるように社会全体で考えていかなくてはいけません。