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「女装した男性の避妊具なしの性交」が事件の発端、田村瑠奈被告と父親の公判も見すえた攻防…検察「殺害だけでなく遺体を解体して弄ぶことも計画、“奴隷扱い”の両親は抗えず」弁護人「SMプレイに行ったはずが『おじさんの頭を持って帰ってきた』で、この世の地獄」

2024年06月09日(日) 07時00分 更新

浩子被告の廷内スケッチ、瑠奈被告、修被告
浩子被告の廷内スケッチ、瑠奈被告、修被告

 去年7月、札幌市の繁華街ススキノのホテルで、当時62歳の男性が殺害されて首を切断、頭部を持ち去られた事件…殺人などの罪で起訴された親子3人のうち6月4日午後、母親の初公判で、いびつな親子の関係がクローズアップされる中、検察と弁護人、どちらも今後の田村瑠奈被告、父親の公判を見すえ、事前の殺害の認識などについて、主張の異なる攻防をくり広げました。

 起訴状などによりますと、札幌市厚別区の無職、田村瑠奈(るな)被告30歳、父親で精神科医の修被告60歳、それに母親で無職の浩子被告61歳の親子3人は、去年7月、札幌市のススキノのホテルで、当時62歳の男性が殺害されて首を切断、頭部を持ち去られるなどした事件で、それぞれ下記の罪に問われています。

弁護人の冒頭陳述で、中学から不登校、18歳ごろから引きこもりとされた瑠奈被告
■田村瑠奈被告=殺人、死体損壊、死体領得、死体遺棄

・被害男性の首を、刃渡り約8.2センチの折りたたみナイフで何度も刺して殺害
・殺害後、ノコギリなどで首を切断
・頭部をキャリーケースに隠し、修被告が運転の車に乗って自宅まで運ぶ
・刃物などで皮膚を剥ぎ取り、眼球などを摘出
・その様子をビデオ撮影することを企て、浩子被告に依頼

総合病院の精神科長で、バンド活動も熱心だった修被告
■父親の修被告=殺人ほう助、死体損壊ほう助、死体領得ほう助、死体遺棄ほう助

・瑠奈被告の殺害目的などを知りながら、ノコギリ2本、キャリーケースなど12点を購入して渡す
・犯行後の瑠奈被告を自宅まで運び、男性の頭部を隠すことを容認
・浩子被告を介して頭部損壊の様子のビデオ撮影の依頼を受け、実行

去年8月、警察車両で移送の際、その表情を一度だけ垣間見せた浩子被告
■母親の浩子被告=死体遺棄ほう助、死体損壊ほう助

・男性の頭部を瑠奈被告が自宅に隠すことを容認
・瑠奈被告から頭部損壊の様子のビデオ撮影を求められて容認、修被告に実行を依頼

50枚の傍聴席求め、開廷1時間前までに約350人が長い列
 瑠奈被告と修被告に先立ち、6月4日午後、札幌地裁で開かれた浩子被告の初公判、浩子被告は「頭部の損壊を知ったのは、家に持ち込まれた後で、隠すことを容認していたというのは違います。知った時には、すでに浴室にありました。あまりに異常なことだったので、娘に対して何も言えず、とがめることもできず、認めることもできず、何も言えませんでした」と死体遺棄ほう助の起訴内容を否認。

死体遺棄と損壊のほう助の起訴内容を否認、浩子被告の廷内スケッチ
 さらにビデオ撮影についても「実行すると容認するのも違います。具体的に何を撮影するのか、知らされていませんでした。とても耐えられなくて、助けを求める気持ちで夫に撮影を依頼。犯罪を手伝う意思は全くなく、損壊を手助けするつもりも全くなかった」と涙ながらに死体損壊ほう助の起訴内容も否認しました。

浩子被告、初公判の廷内(6月4日午後、札幌地裁)
 弁護人も、浩子被告は被害男性の頭部を瑠奈被告が自宅浴室に置き続けたことを認識していたが、容認するような発言も一切しておらず、犯罪は成立しない。

 また、ビデオ撮影しながら頭部を損壊する計画についても聞いておらず、抽象的に撮影を修被告に依頼しただけで、修被告も頭部に触れず、黙って撮影していたとして、無罪を主張しました。

 このあと、検察と弁護人、どちらも冒頭陳述で、いびつな親子関係、瑠奈容疑者が男性を殺害した動機などについて、下記のように指摘しました。

女装した被害男性と瑠奈被告が初めて会い、意気投合したダンスクラブ、同じフロアに修被告
 そこで一致したのは、瑠奈被告が女装していた被害男性に避妊具なしで性交されるなどし、トラブルになったことが事件の発端である点。

 検察は、その怒りなどから、殺害だけでなく、もともと人体に興味があった瑠奈被告が遺体を解体して弄ぶことを企て、修被告も容認して協力と指摘。

 これに対し弁護人は、修被告の殺人ほう助などの無罪主張を視野に、両親には瑠奈被告と被害男性がSMプレイをするという認識しかなく、殺害は、瑠奈被告が自宅に頭部を持ち帰って初めて知ったことなどを主張しました。

■検察の冒頭陳述

◆親子関係、生活状況

・1人娘の瑠奈被告を幼少の頃から叱ることなく、溺愛
・成人後も、望むものを全て買い与える
・自宅は瑠奈被告の物であふれ、足の踏み場がなくなる

・常に瑠奈被告の機嫌を伺い「お嬢さん」と呼び、敬語使う
・浩子被告は「私は奴隷です」という誓約書を書かされ、リビングに貼られる
・修被告も「ドライバーさん」と呼ばれ、夜通し遊ぶ瑠奈被告に付き合う
・奴隷扱いされても抗わず“瑠奈ファースト”の家族関係

◆被害男性との接点、殺害の動機

・ダンスクラブに行ってみたいと言われ、閉店イベントのことを伝える
・女装の被害男性と意気投合し、カラオケに行くと言って、ホテルで性交
・その際、被害男性は瑠奈被告との約束を破り、避妊具を使わず
・妊娠のリスクを修被告に伝え、一緒にクリニックへ
・瑠奈被告は、怒りから殺害を考え、ナイフや手錠などを購入も、両親は止めず

・中学の頃から人体の構造に興味を持ち、頭蓋骨の模型などを家に展示
・殺害だけでなく、遺体を解体して弄ぶことを計画
・修被告に依頼して、ノコギリやキャリーケースを購入
・浩子被告も「あなたにできることは、それぐらいでしょ」と言われ、エタノールやハイターを購入

・修被告が瑠奈被告に告げずに被害男性に電話、会わないよう要請するも拒まれる
・ホテル内でSMプレイを装ってアイマスクを付けさせ、手錠で緊縛してカメラ撮影
・瑠奈被告は「お姉さんが一番、反省しなきゃいけないことは、私との約束を破ったことでしょ」などと話し、ナイフで突き刺して殺害
・頭をノコギリで切断してキャリーケースで運び出し、修被告の車両で自宅まで運搬

◆殺害後の状況

・浩子被告は遅くとも7月3日には頭部の隠匿を知ったが、24日まで容認し、瑠奈被告と生活を続けた
・瑠奈被告から頭部を損壊する様子の撮影を頼まれ、容認
・修被告にLINEで「撮影カメラマンするでしょ?」と伝える
・修被告がビデオ撮影
・浴室にハンガーとS字フックでザルを吊るし、そこに剥ぎ取った皮膚を干して「私の作品を見て欲しい」
・修被告にも「見せたい」と言われると、LINEで「よろしかったら、お嬢さんの作品をご覧くださいな」

■弁護人の冒頭陳述

◆親子関係、生活状況

・小学2年の頃から学校を休みがち、中学入学後は不登校
・一時、フリースクールに通うも、18歳ごろから自宅で引きこもり
・自殺未遂くり返し「田村瑠奈は死んだ」と言い始める
・自分の死体に複数の人格が入り込んでいる妄想=ゾンビ妄想を抱き、自分が田村瑠奈である認識なくなる
・修被告を「ドライバーさん」浩子被告を「彼女」などと呼ぶようになる
・自分の物を触られることを極端に嫌がる
・自宅内は瑠奈被告の物やゴミであふれかえり、足の踏み場もない状態

◆被害男性との接点、殺害の動機

・数年前からホラー映画やSMプレイに興味
・怪談バーに行くようになった後、被害男性と知り合うダンスクラブへ
・意気投合した女性とカラオケのはずが、ホテルに連れて行かれ、女性は女装した男性だった
・避妊せずに性交されたことに怒るも「謝ったら、許してあげる」

・ススキノのダンスクラブを回って被害男性を探し、7月1日に会う約束
・SMプレイをするような話
・別の男性ともホテルでSMプレイ
・瑠奈被告が楽しみにしている様子だったので、両親は止めることはできないと判断
・被害男性に止めてもらうよう求めるも「向こうが会いたがっているわけだから」と拒まれる
・瑠奈被告が嫌がることをしないよう、被害男性に依頼
・あくまでも両親はSMプレイに行くものと思う

◆殺害後の状況

・事件発生の翌朝、浴室に見慣れないプラスチックケース
・瑠奈被告の物は触れないため、中を確認せず
・数時間後、瑠奈被告から「おじさんの頭を持って帰ってきた」と告げられるも、現実感なし
・翌日、報道で事件を知るが、恐ろしくて近づけず

・瑠奈被告から「見て」と言われ、すでに皮を剥がされ、全体が赤くなった頭部を目の当たり
・「この世の地獄がここにある」と深い絶望感
・インスタントカメラの写真3枚を差し出され、強い口調で「ちゃんと見て!」

・浴室で動画を撮影することも頼まれたが、赤い頭部を直視できないため、具体性がないまま、修被告に助けを求める
・その後も眼球が入ったガラス瓶を見せられたり、寝床の近くに置かれたりする
・「私の作品を見て」と言われ、干された皮を見せられる

・言葉では言い尽くせないようなストレス、あまりにも異常な生活だったが、成す術なく「警察が来たときは、運命を受け入れよう」
・これまでどおり、家族として過ごすことを選択
・瑠奈被告だけが逮捕されると思っていたところ、夫、さらに自分も逮捕

次回、浩子被告の公判に修被告が証人として出廷予定
 裁判員裁判となる瑠奈被告と修被告の公判の見通しは立っていませんが、次回、7月1日の浩子被告の公判には、修被告が証人として出廷、証言することになりました。