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コメの価格高騰に歯止めは…“備蓄米”21万トン放出を政府が発表「5キロで4000円を超え…もう異常事態」店頭価格は元に戻るのか 小売店や弁当店、生産者の反応は?

2025年02月14日(金) 19時13分 更新

◇《備蓄米の放出…価格高騰に歯止めはかかるか?》

ナギーブ モスタファ記者
「日本人と言えば、やっぱりお米ですが、消費者にとっては厳しい状況が続いています」

2月14日、『政府備蓄米』の放出が、正式発表されました。

江藤拓 農水大臣
「販売数量は21万トンとします、これは、いわゆる流通が滞っている状況をなんとしても改善したい」



最大で21万トン、お茶碗にして32億杯分が市場に出されます。

まずは15万トンが放出され、早ければ、3月下旬にも店頭に『備蓄米』が並ぶということです。



あいちょう釧路 相澤長昇 社長
「5キロで4000円を超えているという、もう異常事態だと思う」

果たして、消費者にとって、手に入りやすい価格まで戻るのでしょうか。

◇《備蓄米の放出後もコメの店頭価格は高止まり?》

北海道釧路市内のスーパーです。14日のコメの店頭販売価格は、5キロで4000円前後。

卸業者からの要請もあり、今年1月から300円ほど値上げしました。

客「もうすごく高くなっている」

客「(価格が)高くても、生きるためにはコメを買うしかない」

去年、猛暑による不作や、インバウンド需要の急増を受け、全国のスーパーからコメが消えました。

この店でも、国産のコメが手に入らず、タイ米やカリフォルニア米を仕入れて、販売したこともありました。

『備蓄米』の放出で、今後、店頭価格は下がっていくのでしょうか?

あいちょう釧路 相澤長昇 社長
「正直コメの価格に関して、現状維持かなと思う。3000円半ば前後ぐらいで5キロは(価格が)動いていくのかなと見ています」



釧路と札幌に5店舗を構えるコメの専門店も、いまのコメ相場では、安く販売できないと話します。

こめしん 德山大介 社長
「これまでコメ相場が、ずっと上がり続けている状況だけれど、新米の時期で、大体2万5000円前後(60kg)で取引されていたものが、今はコメ業者間のやり取りでは、5万円弱ぐらいで取引されている状況」

「これまで米店が仕入れている分の価格もあるので、多少その(備蓄米を)安く仕入れた分があるとしても、平均でならすとそんなに安くなるほどではないのかなと」



◇《コメの仕入れ価格上昇で、弁当店でもやむなく値上げ》

札幌市北区の弁当店です。



一番人気は、約3合のコメを使った『1キロおにぎり』。去年の夏は600円で販売していました。

しかし、海苔や卵などの食材に続き、比較的価格が安定していたコメも高騰したことで、去年9月と今年1月の2回にわたり、やむなく値上げしました。



まんぞく弁当 麻生店 湯浅孝臣 店長
「今回、コメがぐっと値段が上がったので、ちょっとここは、1回価格改定しないと…ということで、月10万ちょっとぐらい利益、今この価格帯で」

備蓄米の放出で、コメの価格が下がれば、少しでも以前の値段に近づけたいと話します。

まんぞく弁当 麻生店 湯浅孝臣 店長
「今、もう利益を削って営業しているのが現状なので、少し下がってもらえれば、なるべくリーズナブルに販売できるのかなと」

◇《去年の収穫前から注文殺到も…生産者が抱える不安》

影響はコメ農家にも及んでいます。

舟山農産 舟山賢治 代表
「注文数は、もう去年の収穫前から、凄く来ていた」



北海道上川地方の当麻町で農業を営む、舟山賢治さん。

コメの直接販売もしていますが、去年秋、これまで取引のなかった東京の小学校から突然『給食用に販売してほしい』と注文がありました。

舟山農産 舟山賢治 代表
「契約していたのに、売ってもらえなくなったという学校給食関係者の人もいたので、ちょっとかわいそうだな…とか何とかしてあげたいなと」

コメの値上がりは、農家から見ても“異常”だと感じています。

舟山農産 舟山賢治 代表
「今の市場価格は、僕たちが売った米の価格とは、ちょっとかけ離れている感じがある」

「消費者が離れてしまうとこの先、価格の維持もそうが、農家が続けられなくなることも考えられるので、消費者も十分な量を適正価格で買える状況が早く来ることを望んでいる」

◇《そもそも政府の“備蓄米”とは…おいしさは?》

堀内大輝アナウンサー)
そもそも、政府がコメを備蓄するようになったのは、1993年の冷夏によるコメ不足がきっかけでした。

凶作や災害で、コメの供給量が大幅に足りない時に備えて、全国の倉庫にあわせて100万トン程度保管されています。

これまで東日本大震災の時などに放出されていました。流通を円滑にすることを目的に放出されるのは初めてです。
 
堀啓知キャスター)
“備蓄”という言葉から、お米の味が落ちているのではないか…そんな印象も持たれがちですが、実際にはどうなんでしょうか。

堀内大輝アナ)
政府は、備蓄米を最大21万トン放出するとしていて、はじめに放出される15万トンのうち、10万トンは去年、生産されたコメです。

残りの5万トンは、2年前に生産されたコメとなっています。



堀啓知キャスター)
去年のコメであれば、私たちが食べているものと、鮮度としては同じということですね。
  
◇《最大21万トンの“備蓄米”放出で店頭価格は落ち着くのか?》

ところで、肝心なコメの価格はどうなるでしょうか。

堀内大輝アナ)
そもそも、いまコメの価格が高騰しているのは、一部の業者が米不足を恐れたり、より高く売れるタイミングを狙ったりして、コメを自分のところにストックしている状況があるとみられています。

コメの流通に詳しい宇都宮大学の小川真如(おがわ・まさゆき)助教は、今後のコメの価格について、こう見通しています。

・「業者がコメを“売り渋る”メリットがなくなるので、コメ全体の価格は下がるとみられる」

・「ただし“備蓄米”はさまざまな品種があることから、まず流通するのは外食や弁当など」

・「さらにディスカウントショップなどと考えられ、一般のスーパーなどで購入するコメの値下げにはつながらない可能性も」

堀啓知キャスター)
猛暑だとか、インバウンド需要の増加だとか、買いだめだとか…、こういう事態はいつでも起こり得ることなので、そのたびに右往左往するのではない、そうした普段からの何か取り組みについて、今後は、もっと考えていかなくてはいけないと感じています。 

北海道ニュース24