気温上昇で北海道は“春”の訪れ?一方で“寒さ”が売りの観光地は暖冬の影響…自然現象「御神渡り」は今後見られなくなる可能性も
2025年02月28日(金) 17時10分 更新
札幌市中心部の大通公園に面したビルの温度計…午後1時すぎの表示が10℃に。
2月28日の北海道内は、ぽかぽか陽気になりました。
堀内大輝記者
「雪の多くて、日向では大きな水たまりができています」
道内は南から高気圧が張り出し、広く晴れて気温が上昇。
最高気温は、札幌市の手稲山口で11.4℃を観測したのをはじめ、24の地点で10℃以上と、4月上旬から中旬並みの陽気になりました。
道内で気温が10℃以上になるのは、2025年に入って初めてです。
大阪からの観光客
「予想外…寒いと聞いていたので厚着してきたが、暑くて中(シャツの下)は半袖」
「カイロ持ってきたが、いらなかった」
一方、最高気温10.9℃を観測した函館市では、雪が解けた道路脇の土手にフクジュソウの花が咲き、一足早く春の訪れを告げています。
3月1日も全道的に晴れて、札幌市の予想最高気温は8℃と高めですが、一転、2日には気温が下がり、3日には全道で真冬日になる見込みです。
2025年の道内は、例年に比べて暖かい日が多く、道東の観光地では、暖冬の影響が出ています。
■堀内大輝アナウンサー 札幌市西区 中継リポート
地下鉄東西線の琴似駅前に来ています。帰宅時間帯ということもあって、この辺りは人通りも多いような場所です。
日中、朝から気温が上がりました。歩道の雪も溶けて、シャーベット状といいますか、ザクザクサラサラとした雪質になっています。
VTRでも取材していた場所なんですが、現在は雪が解けて、交差点の横断歩道には大きな水たまりができています。
朝と比べるとその幅が少し大きくなったような感じがします。
横断歩道を渡るときは、この中に飛び込む勇気はないので、みなさん車道側に大きく回っているというような状況です。少し危なさも感じますし、渡るのが一苦労だなというような状況になっています。
車が勢いよく通ると、泥はねもにも注意が必要な状況になっています。
■北海道東部の観光地では暖冬の影響
『源泉かけ流し』が売りの、弟子屈町の川湯温泉。道内でも寒さが厳しい地域ですが…。
お宿 欣喜湯・星野慎吾さん
「例年ですと、冬は-20℃を下回る日も何日もあるような極寒な場所ですが、今年は-20℃を下回る日が数日しかなかった」
川湯温泉で働く星野さんが、2024年に撮影した映像を見せてもらいました。
空気中の水蒸気が木に着氷して白く見える「霧氷(むひょう)」と呼ばれる自然現象で、温泉街を流れる温泉川の蒸気が、氷の花のように咲いています。
しかし、2025年2月28日の川湯温泉を見てみると、「霧氷」どころか、雪が少なく土が見えていました。
こちらは、4年前に撮影された氷の結晶が太陽の光に輝く「ダイヤモンドダスト」です。
これらの自然現象は、-15℃以下に冷え込んだ日に発生することがありますが、2025年は出現する回数が少ないということです。
お宿 欣喜湯・星野慎吾さん
「お客さまのなかで、川湯温泉の寒さや霧氷やダイヤモンドダストのような自然現象を見に来ている方もいるので、ちょっと物足りない冬になってしまっている」
オオハクチョウの飛来地としても有名な弟子屈町の屈斜路湖でも、暖冬による異変が起きています。
アウトドアガイドSOMOKUYA・土田祐也代表
「僕らが立っているところくらいまでが岸。ここから数歩踏み出すと湖。氷が安定していなくて薄いので上がらないほうがいい」
本来であれば湖全体が凍っているはずですが、いまは湖面の約3割ほどしか凍っていません。
日中と夜の気温差によって、湖面の氷が縮小と膨張を繰り返してせり上がる「御神渡り(おみわたり)」現象も、2025年はまだ見ることができません。
アウトドアガイドSOMOKUYA・土田祐也代表
「(客から)『寒いと思って来たのに暖かいですね』と言われると、寒さを売りにしているところもあるので、申し訳ない気持ちもある。御神渡り(現象)はある程度、湖が凍ってからできるので、この時期に見えていてもおかしくない。今年は肝心の氷が張っていない。難しいというか発生できない条件」
■屈斜路湖の結氷が今度どうなっていくのか
北見工業大学 地域環境工学科の亀田貴雄教授に聞きました。
1984年の観測開始以降、屈斜路湖が過去に全面結氷しなかった年が3回あり、地球温暖化が影響していると推測されます。
弟子屈町川湯の平均気温は、この40年で約5℃上昇していて、このまま温暖化が続くと…
2027年から2038年には全面結氷しなくなる可能性があり、「御神渡り現象」も見られなくなるかもしれません。
冬ならではの美しさ、なんとか残っていってほしい所ではありますが、気候変動が今後さらに観光業に影響を与えそうです。