北海道新幹線の札幌開業は今から14年後の“2038年度末”になる見込み 遅れの原因は地質不良のトンネル工事への対応…人手不足や労働時間規制なども要因に
2025年03月13日(木) 20時30分 更新
◇《北海道新幹線の札幌開業は14年後…その時に何歳?》
13日のJR札幌駅上空です。
麻原衣桜記者(13日)
「JRの線路に沿って工事が行われており、(北海道)新幹線の走るルートが徐々に姿を現わしています」
そんな中、東京・霞が関の国土交通省では13日午後――。
中原達也記者
「新幹線延伸有識者会議が、まもなく始まります」
土木・建築、公共交通の有識者らが集まり、北海道新幹線の新たな札幌開業の時期を検討。開業は、今から14年も先の2038年度末になる見込み、との検討結果を示しました。
76歳
「14年後だと89歳か90歳。我々が生きている間に開通する、日の目が見られると期待していたけれどダメなのかなと」
21歳
「14年後は35歳くらい…飛行機がなくなった時とか、代わりにできるかなと思っていたのに、無いというのは寂しいかも」
2歳の娘を連れた親子
「(14年後は子どもが)16歳。ちょうど修学旅行とかで(新幹線が)あるんだったら良かったかもしれない」
◇《1972年出版の『日本列島改造論』に掲げられたプラン》
田中角栄総理(1973年当時・札幌)
「次代の国民のために、我々の子どもや孫のために、もうひと汗かこうじゃないですか」
1972年に出版された田中角栄氏の『日本列島改造論』。
田中角栄氏が総理になる、前の月に出版された『日本列島改造論』に、新幹線ルートの原型が記されています。
“全国新幹線鉄道網理想図”です。
函館から札幌、釧路、網走、稚内まで走る計画で、出版の翌年1973年、田中角栄総理は、北海道新幹線の建設計画を決定しました。今から52年も前のことです。
◇《工事区間にはトンネル17本“もぐら新幹線”ゆえの問題》
矢萩尚太郎アナウンサー(2016年取材)
「速い速い、これが北海道新幹線の本気!時速260キロです」
計画では札幌~東京間の所要時間は4時間55分。札幌~新函館北斗間は1時間を切る57分です。夢のような速達性を実現するのはトンネルです。
新函館北斗から札幌までの212キロの距離のうち、トンネルは17本、8割がトンネルです。
麻原衣桜記者(13日)
「小樽の朝里川温泉付近です。この辺りから新幹線がトンネルに入り、JR札幌駅付近の石山通から顔を出すということです」
小樽と札幌の間は、ほとんど地下を走ることから“もぐら新幹線”とも呼ばれますが、このトンネルが開業遅れの理由の一つになっています。
想像を超える巨大で強固な岩盤。一方では、軟弱で脆く、工事に危険が伴う地盤。
最新のトンネル工事の進ちょく状況をまとめた資料には、すでに3、4年ほど工事が遅れていることを示す部分が目立ちます。
専門家らはこの先、さらに想定外のトラブルが起きた場合、開業時期は2038年度末から数年単位で遅れる可能性があることも指摘しています。
◇《当初の2030年度末開業を見据えたマチづくりにも影響》
麻原衣桜記者(13日)
「札幌中心部では、空から見ると、新幹線だけでなく、ビルなどの建設工事が行われていることがわかります」
札幌の中心部では、2030年度末だった新幹線の開業を見据えて建設ラッシュを迎えています。
しかし、最低8年遅れの2038年度末の開業見通しに、マチづくりにもさまざまな影響を与えそうです。
帝国データバンク札幌支店 松田尚也さん
「さまざま経済効果が8年後に延びる。要は『機会損失』が発生するとみている」
「札幌に延伸することによって、沿線自治体の各駅の入込み数、観光客が増える見通しで、得られるはずだったものが得られなくなる。(沿線自治体は)計画の見直しなどを迫られるのではないかという印象は受けた」
新幹線の建設費は、3分の2を国が負担しますが、残りの3分の1は地元の負担です。工事の遅れでコストが増えれば、新たな財政負担を生む可能性もあります。
堀啓知キャスター)
時間の正確さが自慢の新幹線をめぐり、13日、国が明らかにしたのは、札幌延伸の大幅な遅れでした。
森田絹子キャスター)
背景には、何があるのでしょうか。13日の有識者会議を取材した中原記者が東京にいます。
◇《13日の報告書案には新たな開業年は明示されず》
中原達也記者@国土交通省から中継)
有識者会議は13日午後2時から約2時間にわたって、開かれました。
そして、今後、工程の短縮策をとった場合でも、札幌延伸の完成・開業の時期は、これまでよりも8年遅い“おおむね2038年度末ごろ”の見込みであるという“報告書案”が議論されました。
今後は有識者会議の座長が“報告書案”の修正を行うとして、新たな札幌延伸の開業年は明示されませんでした。
遅れの一番の原因は、工事区間の8割を占めるトンネル工事です。
『渡島トンネル』や『羊蹄トンネル』で、地質不良や巨大な岩盤が見つかったことで、工事は何度も中断しました。
しかも、今後も同じようなことが起きる可能性が高いとされ、その場合、開業は数年単位で遅れることになります。
また、作業員の“労働時間規制”や“人手不足”も工事の遅れに拍車をかけました。
13日の報告書案では『現時点の開業見通しには、相当程度の不確実性が残る』とも指摘されていて、今後、掘削の難航しているトンネルが貫通する目途が立った時点で、改めて開業時期を定める方針です。
東京の国土交通省からお伝えしました。
◇《なぜ開業延期は8年間の見通しなのか…工事長期化コストも増加》
森田絹子キャスター)
『渡島トンネル』を例に、なぜ8年間の開業延期となったのか、その内訳をまとめました。
①地質不良の対応→【5年4か月】
②作業員の労働時間規制→【3年4か月】
③時速320キロ化の試験増加→【1年3か月】
これらを合わせると【9年11か月】工期が延びることになります。
ここから2年程度の“工程の短縮効果”を差し引いても、さらに【7年9か月】も時間がかかる計算となります。
堀啓知キャスター)
札幌開業は、最短で2038年度末の見通しですが、工期が延びるということは、それだけコストも増えるということにつながります。
さらに人口減少が進む北海道でいざ、札幌延伸が実現した時、どんな札幌になっているのか?開業延期の影響は大きいと考えられます。
札幌中心部の工事にみられるように、沿線のマチづくりにも直結する話だけに今後、計画の実現性やニーズを見極める目も必要になります。