減少する過疎地域の学校 「卒業するまでいたかったな」116年の歴史に幕を下ろした全校児童5人の小学校に密着
2025年03月30日(日) 09時07分 更新
2024年度、道内では29の小中学校が歴史に幕を下ろします。
その1つの、ある小学校に密着しました。
閉校は寂しいだけじゃない。100年以上にわたり、子どもの成長を見守り地域の絆を紡いだ学校の最後の記録です。
北海道の喜茂別町立鈴川小学校。
聞こえてくる太鼓の演奏は、先生の力を借りずに子どもたちだけで伝えてきた、この学校の伝統です。
壁一面には、譜面が貼られています。
・鈴川小学校6年生 加藤愛己さん
「いつでも(太鼓を)広めるときが来たら、広められるようにできたらいいな。閉校して太鼓ができなくなるわけだから…」
鈴川小学校は2024年度、116年の歴史に幕を閉じます。
5人の児童と2人の担任の先生、校長、そして勤続20年を超える校務員の金井光昭さんの9人。
給食も毎日、全員が揃って食べます。
・校務員の金井光昭さん
「(以前は)店もあって、汽車も通っていた。にぎやかな町だったんだけど」
鈴川地区の人口は約150人。祖父母の代から通う家庭もあり、小学校は「コミュニティの象徴」です。
肌を突き刺すような寒さの2月の朝。
鈴川地区以外に住む子どもや卒業生も参加し、最後のスキー大会に挑みます。
(この山をみんなはなんて呼んでるの?)
・児童「鈴川国際スキー場!」
・鈴川小学校5年生 工藤瞳子さんの父親
「きょうは皆さんの全力投球を見たいと思います」
撮影や記録は保護者も担当するなど、「地域全体のイベント」です。
ジャンプ台も保護者の手作り。
校長はスノーモービルを乗りこなし、会場の雪をならします。
鈴川小学校の行事は、この学校を愛する人たちのつながりの“証”です。
(かなり全力で参加されてますね)
・鈴川小学校5年生 工藤瞳子さんの父親「当然ですよ!全力って言ったじゃないですか!」
取材した2月13日。この日はたくさんの同級生と一緒に勉強します。
月に1回ほどのペースで、4月から通うことになる喜茂別小学校との「交流日」を設けてきました。
この日は交流の最終日。鈴川小学校の先生や保護者もやってきました。
・小出 一途さんと琴さんの母親
「(妹の)一途は保育所時代を(同級生と)一緒に過ごしているので、雰囲気が分かっていて仲良くできると思う。(姉の)琴は違う保育所で過ごして1年生から鈴川小学校に来た。(同級生の)瞳子ちゃんの存在に助けられています。お互いに支えあっているような感じがします」
休み時間になると、自然と鈴川小学校の仲間が集まります。
・鈴川小学校5年生 小出琴さん
「緊張…」
・鈴川小学校5年生 工藤瞳子さん
「(6年生の)愛己ちゃんはリーダーっぽいから、結構引っ張ってくれる。そういう人がいなくなるのは心配ではあるけど、それは自分たちでどうにかできるかもしれないので、(喜茂別小学校に来るのは)楽しみといえば楽しみ」
閉校の議論が始まったのは、10年以上前。
「2つの学年で児童数がゼロになったら、閉校を決める」
地域の決断の背景には、将来の子どもたちへの思いもあると、田中校長は捉えます。
・鈴川小学校 田中豊校長
「いろんな価値観に触れるというところでは、小さい学校の少ない人数では限界がある。鈴川小学校の役目はここまでかなと。聞く相手は他にもいるということに気が付いてもらいたい」
閉校をきっかけに、新しい出会いもありました。
北海道大学の大学院生が、授業の一環で鈴川小学校を取材し、映像を作ってくれたのです。
・鈴川小学校4年生 米陀日香さん
「一途ちゃんが卒業するまで(鈴川小学校が)あってほしい」
・2年生 小出一途さん
「人数が少なくてもいい」
これからは思い出に変わる、何気ない日常の風景。
・鈴川小学校5・6年生担任 松本里和教諭
「子どもたち主体で動いていけるかな、考えていけるかを一番に考えるようになった」
保護者や地域の人、先生たちの声に、子どもたちの表情も真剣です。
閉校に向けた記念誌には、子どもたちの学校への思いが綴られていました。
・鈴川小学校4年生 米陀日香さん
「私は、学校の太鼓がいつまでも今のまま残ってほしいと思っています」
・2年生 小出一途さん
「私は一輪車が今のまま残ってほしいです」
・5年生 工藤瞳子さん
「鈴川小学校が閉校してしまうのは悲しいし、卒業するまでいたかったな」
・5年生 小出琴さん
「鈴小で勉強したり、遊んだりできて楽しかったよ。たくさんの思い出をありがとう」
この学び舎を巣立つ日は、もう目の前です。
そして、この冬を締めくくるような大雪の日。
鈴川小学校最後の卒業生を送り出そうと、たくさんの人たちが集まっていました。
・校務員の金井光昭さん
「みんなこうして卒業してくんだ。いよいよこれが最後だ」
9人が揃って歌う校歌も、きょうで最後です。
・田中豊校長
「児童の4人も鈴川小学校をきょうで卒業です。4月からは新たな気持ちで、愛己さんと同じバスに乗って、喜茂別中学校と喜茂別小学校へ元気に通ってほしいと思っています」
6年生 加藤愛己さん
「最後の1年をこの5人で過ごすことができてよかったです。喜茂別小学校に行っても一人一人の良さや、優しさを大切にしながら過ごしてください」
撮影を終え、取材班が帰ろうとしていると、子どもたちが自然に集まり、見送ってくれました。
「ありがとうございました~」
堀啓知 キャスター)
少子高齢化の中で全国的にも学校の数も減っていて、思い出の校舎がすでにないという人も多いかもしれません。
森田絹子キャスター)
閉校後の校舎の利活用について、町教委は「関係者と協議し、模索していく」としています。
子どもたちからは「キャンプ場」「子どもだけの遊び場」「遊園地」などとの声がありました。
田中校長は「数年後に卒業生が訪れたときに、思い出が思い起こされる状態で残ってほしい」ということです。