『トランプ関税』発動で揺れる北海道の輸出産業「明るい話はない」国内やヨーロッパに新たな販路を求めるも、専門家は輸出に関わる一連の企業の業績悪化を示唆
2025年04月09日(水) 16時43分 更新

世界を揺るがしているアメリカ・トランプ政権による相互関税。
その政策が及ぼす北海道内への影響も、甚大なものになりかねません。
トランプ大統領(2日)
「日本はアメリカの輸出品に46%の関税をかけている。車などの関税はもっと高いとみなせる。我々は日本に24%の関税を課す」
アメリカのトランプ政権が、9日に発動した貿易赤字のある国と地域を対象にした『相互関税』。
日本には、24%の関税が課されました。
米中の貿易戦争への懸念などから“世界同時株安”を招いていて、金融市場にも動揺が広がっています。
・60代男性
「いま持っている米国株がかなり下がっているので、それもちょっと心配。(損失額は)40万~50万くらいかな」
・60代男性
「NISAも個人でも株を買っていますが、1週間でずいぶんと下がった。10%弱、10%までいかないくらい」
私たち道民の暮らしや道内経済には、どう影響するのか。『トランプ関税』を深掘りします。
トランプ政権は5日、相互関税の第1弾として、すべての国と地域を対象に10%の関税を発動。
第2弾として、9日から上乗せ分の関税を発動し、日本の関税率は、あわせて24%になりました。
アメリカへの輸出に力を入れている道内企業からは、続々と心配の声が…。
・谷本洋 記者
「1袋1トンある輸出用のコメが次々とトラックに積まれていきます」
北海道芦別市などの農家24軒でつくる『芦別RICE』。
国の政策に基づき、9年前から本格的にコメを輸出しています。
ここ数年、輸出量が増えているのがアメリカで、2024年度に輸出したコメ1200トンのうち、アメリカ向けは約6割を占めました。
・芦別RICE 沼田哲男 会長
「アメリカの市場は大きいと感じていた。そこは狙っていたんですけど、こんなことになってしまってがっかりです。僕たち農家が価格で我慢するか、もしくは現地で値段を上げられた時に、他の国のコメに負けてしまった時にどうなるのかなという懸念はありますね」
関税の影響が見通せないなか、新たな販路として、日本料理店が多く進出しているヨーロッパ市場の開拓を目指します。
・芦別RICE 沼田哲男 会長
「(ヨーロッパは)狙いの市場だとは思っていた。トランプさんの発言によって、もっと精力的にヨーロッパに向ける努力をします。どんどん営業かけたいと思います」
・ウオス 桶矢妃 室長
「これが輸出しているホタテになります。不安です、これからが…」
こちらはアメリカへ輸出する企業に、道産ホタテなどを卸している札幌市の会社です。
2023年に中国が日本産の水産物を禁輸して以降、アメリカは最大の輸出先でしたが…。
・ウオス 桶矢妃 室長
「関税が上がるから、取引量がちょっと少なくなるかもしれないとか、(取り引きが)ほぼゼロに近いところまで無くなってしまうのかと心配している。1回の取引量が多いので、それが無くなると打撃も大きいかなと思っている」
そうした輸出向けのホタテを、国内の飲食店に卸していくよう模索しています。
・ウオス 桶矢妃 室長
「明るい話はないので、国内で少しでも飲食店に使ってもらえるように新たなことを考えていけたらいいなと思っている」
道内経済に詳しい専門家は、関税の影響は、輸出企業だけにとどまらないと指摘します。
・帝国データバンク札幌支店 情報部 渡辺雄大 部長
「ホタテだけではなく、アメリカ国内であらゆる輸入品が値上がりする中で、運送している会社とか、一連のサプライチェーンに絡む会社というのは、業績が悪化する可能性がある」
また、トランプ関税は世界経済にとっても大きな打撃だと言います。
・帝国データバンク札幌支店 情報部 渡辺雄大 部長
「今回のトランプ関税に端を発して、世界同時不況にこれからなっていく可能性がある。リーマンショックほどではないにせよ、現段階では大きな影響があると言わざるを得ない」
■北海道民の暮らしへの影響
帝国データバンク札幌支店 情報部 渡辺雄大 部長の見解
・輸出関連企業の業績悪化に伴う雇用や賃金への影響
・アメリカ向け輸出品が国内に流通するものの、値下がりは限定的
・アメリカ経由で日本に輸入される品も価格上昇の可能性
・投資をしている人は、まずは様子見をした方がいい
■アメリカ通商代表は農産品の市場開放求める考え
日本との関税交渉を担当する高官は8日、「我々は日本の市場への参入を拡大したいと思っている。農産品の市場参入を拡大し、良好にしたい」と述べ、日本に対し農産品の市場開放などを求めていく考えを示しています。
日本も含めた世界各国が、アメリカ政府との交渉をスタートしています。
日本政府もトランプ政権との“ディール”(取引)の中で、影響のコントロールが必要になっています。