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「核のごみ」賛否を巡り分断のマチに変化 応募検討表明の町長と反対派議員がそろって「一緒に写真撮ろう」“市民参加型”の意思決定へ 北海道寿都町

2024年08月26日(月) 19時33分 更新

高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場についてです。4年前、北海道後志の寿都町長が応募検討を表明して以来賛成派と反対派によって分断されたマチに、この夏、ある変化がありました。高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場をめぐる問題で、分断されていたマチは、この日、ひとつになりました。



「核のごみ」の受け入れを反対している町議会議員も、久々に町長と会話を交わしました。

祭りを機に、何かが変わりつつある寿都町。そこにヒントがもたらされました。

風力発電の売電収入で年間3億円ほどを財源にしている後志の寿都町。高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場をめぐる「文献調査」で20億円、その先の「概要調査」では、70億円の交付金を得られるため、町は将来の財政の安定に利用したい考えでした。

寿都町 片岡春雄町長
「寿都は刺激策として、一番先に手を挙げて(文献・概要調査の交付金)90億円を得たら、それで私の寿都町の使命は終わりで最後まで行くつもりではありません」

民意はどちらにあるのか、去年の町議会選挙では結果が注目されていました。

大串伸吾さん
「私たちは心の壁をつくり、なるべく(核のごみ)話題をつくらないようにし、静かに分断されています」



大串伸吾さん。
調査を受け入れを表明する片岡町長に反対して、4年前に役場を退職。去年の選挙で新人として立候補し、初当選を果たしました。

選挙の結果、得票数をみると賛成派は963票、反対派は917票と賛否をめぐって意見が真っ二つに割れました。

町民は…
「本心は反対なのさ、やっぱり(交付金は)欲しい。町だって欲しいだろう」

文献調査は先月終わりましたが、町民の間では「核のごみ」の話題すら上がることはなくなっていました。

静かだったマチに先月、お囃子の太鼓と笛が響き渡りました。寿都神社の例大祭です。



住民たちの意見は様々でも、マチ全体がお祭りムードに。

寿都町 早瀬良樹町議
「報道関係では(意見は)割れたほうがいいんでしょうけど、みんなそれぞれ分かり合いながら。近所の付き合いの歴史が長いので」



(神輿の掛け声)

祭りを先導する中に、狩衣姿(かりぎぬすがた)の男性がいました。片岡町長です。



寿都町 片岡春雄町長
「変なところ、撮るんじゃないよ」

コロナが明けて完全復活した祭りに、上機嫌でした。

寿都町 片岡春雄町長
「(子どものころは)世話をやかれて(大人になると)世話をやくほうになる。(世話を)やかれる大人もいますけどね」

祭りの2日目、町長と記念写真を撮ったのは、大串議員です。

寿都町 大串伸吾町議
「これはことしの寿都神社の例大祭で、一緒に写真を撮ろう。という流れになって、初めて町長と一緒に撮れた写真なんです。この4年間では、なかなか…それ(対話)ができない環境ができてしまった」

祭りの1か月後に「町民の会」が開いた自由参加の勉強会です。日本と同じく最終処分場の選定に悩むドイツからの専門家を講師に招きました。



ミュンヘン工科大学 ミランダ・シュラーズ教授
「やはり(住民意見の)分断の問題がある。ドイツにそういう問題が出てくると彼(委員会の代表)が向こう側にいって、両側に話をして、どうにか2つのグループが話せるように頑張る」

ミュンヘン工科大学のミランダ・シュラーズ教授。
ドイツでは、40年ほど前から最終処分場の選定が進められていますが、チェルノブイリ原発事故や東日本大震災などを経て法律も変わり、いまは白紙に戻っています。

ミランダさんは、ドイツで処分場の選定プロセスを「中立に」監視する諮問委員会のひとりです。



18人の委員のうち12人はミランダさんのような専門家。残りは、電話で無作為に選ばれた国民から選出されます。

ミュンヘン工科大学 ミランダ・シュラーズ教授
「処分場を見つけるには透明的なプロセスが必要。市民がこういう調査の権利を持っているのは非常に大切」

一方の日本は、電力会社の出向社員で作られたNUMOが選考プロセスの中心になり、住民の理解促進のため「対話の場」を開いています。

ミランダさんは、ドイツと比較した日本の選定プロセスの「欠点」を指摘しました。

ミュンヘン工科大学 ミランダ・シュラーズ教授
「ドイツでは補償金(交付金)を使って、処分場所を見つけるのは許されていません。お金のないマチが環境の負担を受けることになる」



寿都町 大串伸吾町議
「役場だけでない他の主体が開いたワークショップを繰り返すことによって、議論の輪を町内の中で広げていって、少しずつ話のレベルを上げていったときに、みんなが判断できるようになればいい」

この夏、ミランダさんが寿都にもたらした考えは日本に「市民参加型」という新しい風を吹かせるのか。
秋には、文献調査を終えた結果の説明会がマチで開かれる予定です。