「戦わなければ滅ぼされる…」オウム元最高幹部の上祐史浩氏が語った教団を武装化に向かわせた教祖による“陰謀論” 後継団体『アレフ』では“新たな教祖”をめぐる動きも
2025年03月19日(水) 20時15分 更新
死者14人、負傷者6,300人以上を出し、社会を震撼させたオウム真理教による『地下鉄サリン事件』から、3月20日で30年です。
その後継団体『アレフ』は、札幌などを拠点に活動を続けています。
◇《オウム元最高幹部・上祐史浩氏が語った“陰謀論”の存在―》
元オウムの最高幹部とアレフの元信者が、教団内部の実態を明かしました。
ひかりの輪 代表(元オウム真理教 幹部) 上祐史浩氏
「信者が教祖を盲信したが、教祖が主導して一連の事件を起こしました」
HBCの単独インタビューに応じたのは、上祐史浩氏。
かつて、オウム真理教の広報部長を務め、後継団体アレフから脱会後、現在は『ひかりの輪』の代表に就いています。
ひかりの輪 代表(元オウム真理教 幹部) 上祐史浩氏
「選挙不正の陰謀論、毒ガス陰謀論、そして、人工地震の陰謀論…。あのときは社会が一笑に付した、嘲笑したオウムの荒唐無稽な話なんですが、(社会に)いま広がっている“陰謀論”と非常に似た構造」
「これが、オウム真理教の最後の事件(地下鉄サリン事件)の引き金になった」
◇《陰謀論的な“被害妄想”が教団武装化を進めた―》
ヨガサークルから始まり、宗教法人となったオウム真理教。
麻原彰晃・松本智津夫元死刑囚を救世主として、ハルマゲドン=終末論を掲げ、若者を中心に勧誘を行いました。
信者数は約1万5千人。当時の山梨県・上九一色村の教団の施設“サティアン”でサリンを製造し、地下鉄サリン事件を起こします。
ひかりの輪 代表(元オウム真理教 幹部) 上祐史浩氏
「内部から見ると(社会への)反撃。つまり、もう戦争は始まっていて(松本元死刑囚は)陰謀論的な被害妄想に陥っていた」
「(社会と)戦わなければ、滅ぼされてしまう―。だから、どうしてもやらなければいけない…みたいな形で、教団を武装化して、どう反撃するか…、どう打ち負けないようにするかという陰謀論に入っていった」
◇《後継団体『アレフ』の信者は北海道が最多の300人》
宗教法人としての解散命令を受けたオウム真理教は2000年、『アレフ』と名称を変えて任意団体として存続しています。
公安調査庁によりますと、信者は全国で1200人。そのうち、北海道は最も多く、300人いるとされています。
2024年11月に撮影された、札幌施設の内部の様子です。
祭壇に掲げられていたのは、オウム真理教の教祖であった松本智津夫元死刑囚の顔写真。
台所には、松本元死刑囚のエネルギーを込めた水とされる、甘露水のタンクも確認されています。
伊藤凛記者(3月2日撮影・札幌市白石区)
「午前0時をまわりました。松本智津夫元死刑囚が生まれた3月2日です」
深夜、札幌市白石区の施設では、信者とみられる人の出入りが確認できました。
施設の前に停められたワゴン車。後部座席は、白い布で覆われ、車内で儀礼をしているのか、1時間近く出てきません。
◇《オウム事件の被害賠償支払いが滞る裏では何が…》
団体規制法に基づく再発防止処分により、献金の受け取りや施設の一部の使用が禁止されています。
こうした中、資産状況にも変化が見られます。
『アレフ』には事件の被害者への賠償金10億円の支払い命令が科せられています。しかし、支払っていません。
報告される資産額は、年々減少しているとされます。
公安調査庁は、賠償責任を逃れるために、教団の関連法人などに資産を移動させる“資産隠し”があると見ています。
ひかりの輪 代表(元オウム真理教 幹部) 上祐史浩氏
「教義的に一連の事件を、麻原(松本元死刑囚)の主張に反して“麻原がやった…”と認めて、代わって賠償するのは『アレフ』の心理構造として、非常にやりにくいこと』
「麻原を絶対とする今の『アレフ』は賠償に消極的なのは間違いないです」
◇《後継団体の20代元信者が証言「とにかく麻原信仰が強くて―」》
『アレフ』の元女性信者が、内部の実態を初めて証言しました。
アレフ元信者の女性(20代)
「麻原の次男の写真ですね…紫色の服を着た小さいころの写真を見せられて『いずれ(教祖に)戻ってくる』というお話はされました」
3年前、札幌でアレフに勧誘された元信者の20代の女性です。初めてメディアの前で証言しました。
アレフ元信者の女性(20代)
「職場の悩みを人に相談するくらい、ちょっと悩んでいたということもあって、自分の心も弱っていのもあるかもしれないんですけれど…」
女性は社会人サークルで知り合った男性から、ヨガや心理学を学ぶセミナーに勧誘され、参加しました。
1か月間のセミナーが終盤に差し掛かったとき、講師の男性から『アレフ』であることを明かされたといいます。
女性は入信を迫られ、承諾。施設で感じたのは、オウム真理教の教祖であった松本元死刑囚に対する、強烈な信仰心でした。
アレフ元信者の女性(20代)
「とにかく“麻原信仰”すごく強くて―」
「考え方は(オウム真理教と)一切変わってなくて、祭壇には麻原の写真があって、麻原の声も流れていているんですよね、道場内のスピーカーから」
「いまは損害賠償も支払っていて、当時の危険な組織(オウム)とは違うと言われたので…」
違和感を覚えた女性は、幹部に「脱会したい」と告げると、態度が豹変します。
アレフ元信者の女性(20代)
「それまで優しい感じだったのが、手のひら返したように…。“このままだとあなたは地獄に落ちるよ”と言われたり…“お腹に悪いカルマ(悪行)があるから、病にかかる。がんになるよ”と言われましたね」
脅迫されるも、女性は『アレフ』と関係を断ちました。
◇《麻原彰晃こと松本元死刑囚の次男を“教祖”にする動きも…》
元オウム真理教の最高幹部であり、後継団体『アレフ』に移るも、その後脱会した上祐史浩氏―。
現在『ひかりの輪』の代表である上祐氏は、いま『アレフ』内部では、松本元死刑囚の次男を教祖とする動きが強まっていると、話します。
ひかりの輪 代表(元オウム真理教 幹部) 上祐史浩氏
「(次男の)誕生日などに“復帰祈願の儀礼”を繰り返してきたと…。私が把握するところによると(アレフ内部が)分裂気味かもしれません」
一方、公安調査庁は『ひかりの輪』が、松本元死刑囚の影響を受けているとして、観察処分を適用し、監視しています。
ひかりの輪 代表(元オウム真理教 幹部) 上祐史浩氏
「『アレフ』時代から継続して約25年、被害者遺族の皆さんとの賠償契約を履行しており、今後も賠償と(オウムの)清算に努めてまいりたいと思います」
◇《地下鉄サリン事件から30年…正体を隠して勧誘》
当時を知らない世代が増えるなか、地下鉄サリン事件から、3月20日で30年になります。
森田絹子キャスター)
資産状況や勧誘の実態についてアレフ本部に質問文を送りましたが、これまでに回答はありません。
カルト問題を長年研究する北海道大学大学院の櫻井義秀教授(宗教社会学)は、後継団体『アレフ』について「大学生にサークルやSNSを通じ、正体を隠して勧誘を行っている。公安や警察による、さらなる強い監視が必要」と指摘します。
堀啓知キャスター)
いまも、サリンの後遺症で苦しむ被害者が多くいます。
そして、不安を煽って、間違った道へ引き込んでいくやり方も含めて、オウム問題は決して過去のことではなく、現在も続いている、社会全体で考えていかなくてはいけない問題です。