田村瑠奈被告の父・修被告に懲役1年4か月執行猶予4年 殺人ほう助の罪認定されず、元裁判官「殺害に及ぶとは思っていなかった」供述を否定できず【すすきの首切断殺人】
2025年03月12日(水) 19時03分 更新
札幌・ススキノのホテルで当時62歳の男性が殺害され、親子3人が逮捕・起訴された事件で、札幌地裁は殺人を手助けした罪などに問われた父親に、懲役1年4か月の有罪判決を言い渡しました。
・堀内大輝アナ(12日午前11時 札幌地裁前)
「抽選にもかかわらず、受付時間の前から、傍聴を希望する人が大勢集まっています」
12日の札幌地方裁判所前。異例の事件の判決を見届けようと、約300人が列を作りました。
2023年、札幌・ススキノのホテルで当時62歳の男性が殺害され、頭部が持ち去られた事件。
娘の田村瑠奈被告31歳の犯行を手助けした罪に問われた父親の修被告61歳に、札幌地裁は懲役1年4か月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。
渡邉史朗裁判長
「瑠奈の犯罪を止められる唯一の親という存在として、犯罪を止めたり警察に通報したりするべきだった」
逮捕・起訴された田村瑠奈被告(31)と父親の修被告(61)、母親の浩子被告(62)親子3人のうち、修被告は殺人や死体損壊などを手助けした罪に問われています。
これまでの裁判で弁護側は「娘の犯行計画を知らなかった」として無罪を主張。
一方の検察側は、「計画を知ったうえで関与した」として懲役10年を求刑していました。そして12日午後。
黒いスーツで法廷に現れた修被告はまっすぐに裁判長を見つめ、「懲役1年4か月、執行猶予4年」という判決に耳を傾けました。
札幌地裁は判決で、「瑠奈被告が死体を遺棄することを知りながらそれを容認し、ビデオ撮影で損壊行為も容易にさせた」として、死体遺棄と損壊のほう助の罪を認定しました。
一方で、殺人のほう助については「何らかの犯罪行為に及ぶことは認識していたと言えるが、殺人に及ぶことを認識していたとまでは言えない」などとして認定しませんでした。
審理に参加した裁判員は。
裁判員
「大きく主張が異なっていた。非日常的なことが多かったので、同意していく工程が難しかった」
■元裁判官の内田健太弁護士「殺人ほう助が認定できないとなった時点で…」
・内田健太弁護士
人の命が奪われた状況で執行猶予というのは、いろんな意見があると思います。殺人のほう助が認定できないとなった時点で、死体遺棄、死体損壊だけだと法定刑が下がってしまいます。求刑の10年というのは殺人のほう助が前提でしたので、今の法律の枠組みの中では、妥当な判決だと思います。
■修被告が問われた「ほう助の罪と判決」
「殺人ほう助」は認定されず
⇒瑠奈被告が何らかの犯罪に及ぶ可能性を認識していたとしても、殺害に及ぶとまで認識していたとはいえない
「死体遺棄ほう助」は認定
⇒浴室を隠し場所として提供し、死体遺棄を容認
「死体損壊ほう助」は認定
⇒瑠奈被告の損壊の意思を高め、心理的に助けた
■「まさか殺害に及ぶとまで思っていなかった」という核心部分を否定する事情認められず
・内田健太弁護士
判決要旨をみると、修被告の供述を全部信用しているわけではありません。一部信用できないところもあると言っています。ただ核心部分の「まさか殺害に及ぶとまで思っていなかった」という部分について信用性を否定する事情が認められなかったのがポイントと思っています。
■修被告は精神科医師「職業としての立場よりも親としての位置づけを重視した判決」
・内田健太弁護士
普通、娘からノコギリを買ってと言われたら「何に使うんだ」と確認するのが普通ですが、この田村親子の関係を前提にすると刺激しないために何も言わずに買うことはありうるだろう。
精神科医ということで、もう少しやることはあるのではないかと言う考えもわかりますが、職業としての立ち場よりも親としての位置づけを重視した判決といえます。
■浩子被告と瑠奈被告の裁判への影響
死体遺棄と損壊をほう助した罪に問われている母親の浩子被告の裁判は、来週17日(月)の予定で論告求刑と最終弁論が行われます。
また主犯格とされる、瑠奈被告は2回目の精神鑑定中で、初公判のめどはたっていません。
・内田健太弁護士
浩子被告に関しては、自分より積極的に関与した修被告にさえ共犯が成立しないのだから、当然自分にも犯罪は成立しないと主張してきました。しかし今回、修被告が有罪となったことで、その前提が崩れました。無罪を争う中で、かなり大きなハードルになると思います。
瑠奈被告については、単独で自分で計画を立てて実行したということになっていますので、有罪となった場合には量刑を重くする事情が認定されたと思います。
ただ瑠奈被告については、責任能力が争点となると思いますので、どこがポイントなのかこれから整理していくことになると思います。
■検察は上級庁と協議
札幌地検は「検察官の主張が受け入れられなかったことは残念」とし、今後の対応について上級庁と協議するとしています。また、修被告の弁護側も控訴するかは修被告・浩子被告と話し合って決めていくということです。